地面にたたきおとしてやるぜ。 夢の勇者ナイトブレイカー 第十五話 現実の悪夢(後編)

#6 保育士灰崎くんとテツナちゃんのお話【青峰生誕編】

地面にたたきおとしてやるぜ

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ベルトルト「う…うん」 アルミン「へぇー、例えばどんなとこが?」 エレン「う~ん…いまいちわかんねぇけど、アニが吸血鬼に馬乗りにされてたの見たら《鬼》が暴走しそうになったんだ」 アルミン「それってエレンが怒ったってこと?」 エレン「ただ怒っただけであんなんになったことねえけどな…」• ライナー「ほう」ニヤニヤ コニー「ライナーニヤニヤしててキモいぞ」 ライナー「」グサッ ベルトルト くっ…エレンもアニを…• 26 : 向日葵 qKfi1SU0Z. 」 アニ「教えなーい」クスクス ライナー「よっしゃ!95点だ!」 ベルトルト「ライナー気合いはいってるね」 ライナー「ああ!べリックの仇をはやく討ちたいからな」 ベルトルト「そうだね」 コニー「やべぇ、また0点だ…」 サシャ「うっ…私もです…」 ペトラ「この結果はこれから与えられる鬼呪装備のランク決めにも影響するので、結果を受け止めて次回に活かすようにしてください」• 結果を出せないと鬼呪装備適正試験すら受けれないので気を付けてくださーい」 ペトラ「では解散です」 キヲツケー レイ アリガトウゴザイマシター ペトラ「エレン!」タッタッタ エレン「はい?」 ペトラ「これ」つ刀 エレン「ありがとうございます」 ペトラ「《白死》。 妖刀よ。 まあエレンなら使えるだろうって中佐が」 エレン「《白死》って確か…」 ペトラ「ええ、かつて千の鬼を切り伏せても、刃こぼれ一つしなかった、などという眉唾な伝説が残っている刀よ」 エレン「…」チャキ …エレンが刀を抜く。 刃が呪詛で震えだす、甲高い音が空気を震わせる。 頭の中が殺戮の衝動で埋め尽くされるような気がする。 エレン「確かにこれは妖刀ですね」 ペトラ「1週間後の選抜術式試験ではこれを使ってね」 エレン「ありがとうございます」• あまり時間もない」 エレン「そうだな」 ーーーーー ーーー ー• 前へ」 ミカサ「…」ザッ キース「アニ・レオンハート。 前へ」 アニ「…絶対勝つ」ザッ ミカサ「あなたには無理」 アニ「…」スッ …その、ミカサの言葉が終わる前に、アニが手を、後ろに回す。 すると袖から、武器が降りてきたのがエレンにはわかる。 ミカサ「ブツブツ」 …ミカサも、何か呟いている。 おそらくは、東洋の呪法だ。 ミカサは身体能力を限界まで跳ね上げる。 以前、アニが対吸血鬼のとき遣った神懸かり法の発展らしいが、アニのときよりもさらに赤い火光輪が浮き上がり始める。 エレン「あれは…金剛夜叉明王呪…か…?」 …ミカサは以前にも神懸かり法を使用したことはあるが、ここまで強力なものを遣ったのはエレンも初めて見る キース「始め!」 刹那、ミカサとアニが動き出す。 呪術で増幅されたミカサの動きは、異常に速い。 だが、アニはそれに、きちんと反応している。 後方へ下がる。 手を振るう。 するとその、手の袖から、無数の短刀…いわゆる、クナイと呼ばれている刃物が飛び出す。 そのクナイの柄に糸がついていて、それが宙を舞う。 その、どれに触れても、糸に繋がっている呪術符が爆発し、クナイが跳ね上がってくる仕組みだ。 だが、ミカサはそれを見下ろし、 ミカサ「暗器遣い…女狐にはお似合いの能力…」 突進を止めない。 一瞬で張り巡らされた罠を無視して、真っ直ぐに進む。 ミカサの足に糸が触れる。 瞬間、呪術符が爆発する。 クナイが跳ね上がり、糸に触れた者へと飛んでいく。 ミカサ「…」スッ しかしそれをあっさり、ミカサはかわしてしまう。 さらに次々クナイが跳ね上がっていくが、そのすべてをかわし、よけきれないものは手でたたきおとしながら前に進む。 ミカサがアニとの間合いをあっさり詰める。 ミカサ「これで終わり」シュッ だがアニは、 アニ「残念。 その傲慢さが、あんたを殺したよ」パチン• 途端、ミカサがかわし、叩き落としたはずのクナイの先が、爆発する。 そして地面を跳ねる。 すると、いつの間にかミカサの放とうとしていた拳を、クナイの後ろから伸びていた糸がぐるぐる巻きに拘束してしまう。 ミカサ「ぐぅっ」 ミカサの動きが止まる。 当然だ。 あの、アニが使っている糸には、呪いが込められているのだ。 それに触れてしまったのもは、まるで痺れ薬を注射されてしまったかのように、動きが鈍くなる。 だが、アニは攻撃の手を緩めない。 ジャケットの裏からまた一本、クナイを取り出す。 それをそのまま、一気にミカサの首へと放とうとする。 エレン「なっ…」 キース「やm…」 エレンとキースがやめろという前に、 ミカサ「うごっけぇえええええええ!」 ミカサが叫んだ。 真っ黒な頭の上で、真っ赤に輝く火光輪がぐるんっとまわる。 そしてそのままミカサは、拘束されている糸を無視して、拳を突き出す。 アニ「なっ!? 」 アニが驚いた顔になる。 その頬に、ミカサの拳がぶつかる。 アニ「がぁっ」 うめきながら、クナイを投げる。 そのクナイはミカサの頬をかすめるが、当たらない。 アニの体はそのまま、信じられないほど遠くまで吹っ飛ぶ。 地面に落ち、転がり、そしてもう動かない。 あれは相当なダメージを受けただろう。 おそらく脳が揺れて、しばらく立ち上がれない。 だが、ミカサは動ける。 アニのほうへと、走って進もうとするがそこで キース「やめ!」 ミカサ「…」スッ キース「引き分け!」 ミカサ「!!? 」 ミカサ「なぜですか!? 」 キース「最後に頬を傷つけられただろ。 そしてレオンハートは暗器遣いだ。 これが実戦なら致死性の毒が塗ってあるはずだ」 ミカサ「結局私も死ぬ?」 キース「そうだ」 ミカサ「わかりました。 前へ」 エレン「…」ザッ キース「ブラウン。 前へ」 ライナー「…」ザッ キース「始め!」 刹那、ライナーが斬撃を放つ。 すると、ギィンッという、甲高い、金属と金属がぶつかり合うような音がした。 エレンは、目の前を睨む。 ライナーの手には、東洋で言う、いわゆる日本刀。 その真紅の日本刀が、エレンの白死に押し付けられ、ぎりぎりと音をたてている。 ライナー「へっ…エレンさすがだな…」 そこでライナーが剣を押し斬ってくる。 とても人間の力とは思えない。 しかしエレンはにやりと笑って、 エレン「おもしれぇ。 どっちが強いか、競うか」 言葉とは裏腹に、エレンは一歩引く。 ライナーの剣を流し、それから立て続けに斬撃を放つ。 刹那の間に、何度も剣がぶつかり合う。 だが、ライナーの剣は速かった。 エレンよりも力が強く、剣も速い。 だが技術だけはエレンが勝っていた。 だから斬り負けずにすんだ。 しかし、 エレン「く…そ……まじかよ」 徐々に押されていく。 斬りあいながら、後退させられていく。 ライナー「どうした?競うんじゃないのか?」• 懐に手を入れ、呪符を出す、フリをする。 ライナーはそれに反応し、 ライナー「お、剣では勝てないって認め…」 エレン「うるせぇよ」 しかしエレンは呪符を出さない。 呪符はフェイントだ。 全力で剣を突き出す。 ライナー「うわっ」 ライナーが慌てて、それを払おうとするが、間に合わない。 エレンの剣は、ライナーの心臓へと一直線に向かい、しかし、 エレン「…………」 刺さる前に、止める。 それをライナーはじっと見下ろして、笑う。 ライナー「ははっ、すごいな」 エレン「ライナーだってすげぇよ」 キース「それまで!勝者・イェーガー!」• 前へ」 ベルトルト「…」ザッ キース「キルシュタイン。 前へ」 ジャン「くそっ…なんでよりによってベルトルトなんだ…」 ベルトルト「あはは…まあ、早くやろうよ。 この試合さっさと終わらせてアニの看病行きたいし… エレンにアニは渡さない! 」 キース「始め!」 ベルトルトが指でちょいちょいっと、ジャンを挑発する。 それにジャンは、ベルトに差していた直剣を抜く。 どうやらジャンは、刀剣を遣うようだ。 動きもそれなりに滑らかで、雰囲気もあり、さすが月鬼ノ組研修生ってだけはある。 だが、ベルトルトはやはり半眼のまま、 ベルトルト「じゃーやろうか」 などと言う。 ジャンがそれに反応して、 ジャン「いくz…」 ベルトルト「早く来なよ」 ジャン「…っなろ!」 剣を掲げた。 だが、掲げた瞬間、その剣が消えていた。 そしてベルトルトが、ジャンの後ろに立っている。 ジャンの剣を持って、それをゆっくり、ジャンの首筋に当てながら、 ベルトルト「はい、終わり」 と、言う。 ジャンは一歩も動けなかった。 他の訓練兵がざわつく。 おそらく、今の動きを理解できたのはほんの数人くらいだ。 ベルトルトが遣ったのは、幻術だ。 ベルトルトはまるではやく動いていなかった。 ただ、幻術の出し入れがスムーズなだけだ。 ゆっくり進み、ゆっくり剣を奪って、首筋に当てた。 すると隣で、 ユミル「へぇ~、やるじゃねぇかヘルトルさん」 ユミル「エレンは今の動きわかったか?」 エレン「まあな…」 すると、 キース「レンズ。 前へ」 クリスタ「はい」ザッ と、前に出る。 それで訓練兵たちが、ざわめくのが、わかる ー天使だ。 ー女神が、戦われるぞ。 その他にもたくさんの声があがるが、 エレン「はは、なんかいろいろすげえな」 ユミル「ま、私の天使だからな」 そして、 キース「アルレルト。 前へ」 アルミン「…」ザッ キース「始め!」• それから呪術符を取り出す。 アルミンは、呪符遣いだ。 札をいくつか宙空に投げ、展開し、それを使って大きな呪術を遣おうとする。 そしてその間、クリスタは動かない。 なにもしない。 ただ、ぼんやりとアルミンを見つめている。 そしてそれに、アルミンが アルミン「ク…クリスタ…」 クリスタ「どしたの?」 アルミン「攻撃、してこないの?」 クリスタ「あ、ごめん。 忘れてたっ」テヘッ アルミン「僕の術…完成しちゃったんだけど…」 クリスタ「そう?じゃあ撃ってみてよ」 アルミン「いや、でも、かなり大きな術式で…これ喰らったら、死んじゃうよ?」 クリスタ「へぇ、おもしろそうだね」 アルミン「殺したくないから勝負を辞退してくれないか?」 クリスタ「だから撃っていいって、効かないから!」プンプン などと言う。 それにアルミンは驚いた顔になる。 だが、確かにそれは、アルミンが怯えるほどに無茶なことだった。 アルミンが今、展開している呪法は、かなり大きな威力を持つものだ。 普通なら、仲間に守られながら長い時間をかけて展開する、強力な殺傷能力を持っている呪法。 だが、アルミンはそれをかなり短い時間で完成させてしまった。 だからアルミンは、相当な遣い手といえる。 そしてそれが完成してしまえば、もう、アルミンの、勝ちは確定したようなものだ。 それを喰らって生き残れるような人間はいないし、もう、完成してしまったものを解呪することはできない。 だから、辞退を願った。 もしくは、 アルミン「あの、教官…自分を失格にしていただけませんか?」 などと、教官に、頼む。 それに教官が、クリスタのほうへと目を向け、 キース「どうする?」 クリスタ「だからさっきから撃っていいって言ってるじゃないですか」 キース「…撃ちなさい」 アルミン「っく…死んでも知らないよ!」 と、呪法を発動した。 宙空に浮いた札が明滅し、巨大な炎が生まれる。 それがクリスタへと放たれる。 だがそれにクリスタは慌てず、手をあげ、 クリスタ「消えて」 とだけ、言った。 そしてそれだけであっさり、炎は消えてしまう。 その場にいた全員が言葉を失う。 いったい何が起こったのか、誰にもわからないようだった。 キース教官でさえ、驚いた顔で、勝者がだれかを言わない。 だが、勝者はもう、明らかだった。 クリスタが踵を返す。 エレンに向かって、歩いてくる。 そこで、 キース「しょ…勝者、レンズ!」 なんて声があがるが。 一瞬の間あと、周囲に歓声が響き始める。 その歓声のなか、クリスタは戻ってくる。 すると、隣でユミルが ユミル「な…なにをやったんだ?」 などと、言う。 だが、わからなかった、ということはない。 クリスタが遣ったのも、幻術だった。 だがそれは、ベルトルトのよりも速いわけでも、なかった。 ただ、遣う場所がうまい。 会話をしながら、途中、途中で幻術を挟み込み、アルミンが展開しようとしていた呪術に、定期的に介入していた。 術の発動が、失敗するように。 クリスタの戦い方は、かなりいやらしい。 それでも、まだまだ余裕を残しているようだが…• アニごめんね」 アニ「別にいいよ…されはそういうもんだし」 アルミン「2人ともゴハン取りに行ったら?」 エレン「そだな、行くかアニっ」 アニ「うん」 エレン「じなーな」 ミカサ「おやすみ」• じゃあね」 エレン「おう!」• 」 クリスタ「あ、中佐まさか攻撃するつもりなんですか?」ガタ エレン「まじかよ…」ガタ リヴァイ「死んだやつは修練足りてなかった自分を恨め」ヒュン ライアル「え?」 リヴァイ「…」ドッ リヴァイが自分の鬼呪装備を地面に、突き立てる。 刹那、教室中が真っ黒く染まった。 溢れだす呪いが伝染する。 ドサッドサッ ミカサ「が…ぁ……なに…これ…」 ライナー「し…心臓が……締め付け…られ…」 アルミン「え?え?みんなどうしたの?」キョロキョロ クリスタ「……………ん」 ペトラ「く………」 エレン「…………………」シラー リヴァイ「よし、終わりだ」ズッ リヴァイが地面に刺さっていた刀を抜き、 リヴァイ「…」パチン 刀を鞘に納める。 このまま訓練続ければ鬼呪装備契約の儀に移れる可能性がある」 リヴァイ「あと立ってられた奴」 リヴァイ「お前らは優秀だ。 すぐに俺やエレンの剣と同ランク…」 ミカサ「ハアハア」 ライナー「ハアハア」 ユミル「ハアハア あぁキチィ… 」 アルミン「?」 リヴァイ「《黒鬼》のシリーズに挑戦させてやる」 リヴァイ「で、立ってるのは…ミカサ、ライナー、ユミル、アルミン…か」 ペトラ「あの…中佐」 リヴァイ「なんだ?」 ペトラ「この無茶苦茶な試験はいつものことでいいんですが、アルミンを《黒鬼》シリーズに挑戦させるのは同かと思います」 リヴァイ「なぜだ」 ペトラ「アルミンの心は安定していても鬼を受け入れられるだけの強さは…」 リヴァイ「…強さがなければ死ぬ。 ここはそういう世界だ。 おままごとやってんじゃねえ」 アルミン「………」 クリスタ「ですが鬼は弱い人間を嫌います。 アルミンじゃきっと鬼に取り憑かれ…」 リヴァイ「うるせえ」 リヴァイ「おいアルミン」 アルミン「はい」 リヴァイ「命懸けれるか?」 アルミン「い…命…?」 リヴァイ「やめるか?死ぬのが怖いなら帰ってもい…」 アルミン「…っ!中佐!自分もやります!もっと強い力が欲しいから!もう!大切な人を失わないで済むだけの力が欲しいから!」 エレン こいつ…母さんのことずっと気にしてたのか… リヴァイ「よし、なら行くか…さっさと契約の儀に移るぞ」 ーーーーー ーーー ー• ここにあるのは希少な《黒鬼》シリーズだ」 リヴァイ「まあいい、始めるぞ。 俺も暇じゃない」 ミカサ「どうすれば?」 リヴァイ「好きな武器を選んで儀式陣に入れ。 武器に触れたら自動で契約の儀が始まるようにできている」 リヴァイ「お前らが鬼に負けなければ力が手に入る」 ライナー「…」ザッ ミカサ「…」ザッ アルミン「…」ザッ ユミル「…もし負けたら?」ザッ リヴァイ「人喰いの鬼になるか鬼の力に押し潰されて死ぬかだ」 リヴァイ「まあどのみち死ぬが…」 アルミン「?」 リヴァイ「人喰いの鬼になったら俺が殺す」 アルミン「そんな…」 ユミル「っ!…」ゴクッ ライナー「家族を…べリックを殺した吸血鬼どもを皆殺しにする…俺はそのためにここに来た リヴァイ「抜け。 そしたら始まる」• 直接、《神鬼》や《黒鬼》呼ばれる、鬼の神を呼び出し、それを神器に封印して、使役する。 封印するための器はたいていの場合、武器だ。 弓など。 何年もかけて祀られ、清められた武器に《鬼》を封印して、遣う。 だがそれは、理論上では完成していても、この旧世代のの呪術科学ではまだ、到底実現不可能とされていたはずだった。 もし、可能だったとしても、これを完成させるには、数千、数万単位の人体実験が必要なはずだった。 旧世代の呪術科学では、《鬼》を武器に封印しきれず、武器の使用者が逆に、《鬼》に魂と体を乗っ取られ、周囲に災害を撒き散らしてしまう。 そして《鬼》になるともう、人間としての理性も、記憶も、すべてがなくなってしまい、ただ、ただ、人を喰らうことだけに喜びを感じる、バケモノになってしまう。 ・旧世代とは、グリシャがレイス家と共同で開発した鬼呪装備が兵士の標準装備になるまでの時代• すると、 リヴァイ「言っとくが、その『耐真言法』程度じゃ、刀に触れたときの呪いは防げないぞ」 ライナー「?」 ライナー「まあいい、俺に力を寄越せ」 そして地面に突き刺さっていた刀を手に取る。 刀から信じられほどの強大な力が体に入ってくるのを感じる。 そしてそれは、決して入ってはならない、力。 全部を壊せ。 思考が、強烈な破壊衝動で埋め尽くされていく。 怒りと絶望。 喜びと悲しみ。 それらがすべて交ぜになって、黒く、黒く、何もかもが埋め尽くされていく。 リヴァイが言ったことは本当だった。 『耐真言法』などといった、呪詛に対抗するための精神増強呪術など、唱える暇もなかった。 体の中の一番大切な部分ー魂の奥の奥に憎しみが膨れ上がっていき、そしてその中央に、一匹の《鬼》が現れる。 《鬼》と言っても、見た目は人間と変わらない。 ひどく綺麗な、中性的な容姿を持った、人形かなにか。 男か女かもわからない。 ただ、そいつが《鬼》だとわかる。 《神鬼》と呼ばれる階級にいる、《鬼》だとわかる。 《鬼》が言う。 悲しげに笑いながら言う。 鬼「人間は悲しい。 すぐに力を求める」 ライナー「…」 鬼「でも、君の選択は間違いだよ、ライナー。 ここは来ちゃいけない場所だ」 ライナー「…」 鬼「まあ、君の欲望が、力への渇望が狂気にまで達するのは、それを餌としているわたしとしては喜ばしいことなんだけど…」 ライナー「…」 鬼「力が、欲しい?」 ライナー「欲しい」 鬼「そのために、なにかを失っても?」 ライナー「ああ」 鬼「仲間なんか作れないよ?ここは修羅の道だ。 」 ライナー「ああ」 鬼「………気に入った。 僕の名前は真昼ノ夜だ」 ライナー「真昼ノ夜…か…」 鬼「ああ。 じゃあこれで契約は完了した。 僕は君の力となろう…刀となろう。 目を開け。 君の強い欲望を膨張させて放て。 魂から〈狂鬼〉を放て、ライナー・ブラウン。 お前に力をやろう!」• ライナー「」パチ ライナーの意識は現実に戻った。 エレン「うまくいったか?ライナー」 ライナー「まあな」ヘヘッ ユミル「余裕こいてんじゃねえよゴリラ」 クリスタ「もう!ユミル!」プンプン ユミル「わかったわかった…」 ユミル「ったく調伏に時間かかりやがって」 ライナー「お前も成功したのか」 ユミル「当然だ。 あとはアルミンだけだ」 ミカサ「アルミン…」 ーーーーー ーーー ー• いま俺はお前の最も深い部分の記憶を再生してわけだが…」 アルミン「え…エレン…?」 幼エレン「ばーか、全部幻覚だ」 アルミン「君は一体…」 幼エレン「俺は鬼だ。 お前が呼び出したんだろう?鬼呪装備を手に入れて家族とエレンの母の敵をとりたいといって」 アルミン「あ…あ…そうか…」キョロキョロ アルミン「僕…鬼との契約中だった…」 アルミン「!、じゃあ君が鬼なんだね」 幼エレン「そうだ」 アルミン「意地悪な姿してるね」 幼エレン「お前は間抜けな顔をしている」 アルミン「あはは、よく言われるよ」 幼エレン「で、どうする?」 幼エレン「お前は力が欲しいのか?」 アルミン「え?」 幼エレン「お前の心に触れたがいまいち強い復讐心を見つけられなかった。 あるのは安定。 優しさ。 他者への愛情…」 幼エレン「どれも俺は嫌いだ。 俺の餌は欲望だけだからな」 アルミン「そ…そんなこと…」 幼エレン「嘘だな。 お前は自分だけ助かったことを喜んでいる」 アルミン「そんなこと…」 幼エレン「それに争いを嫌っている。 仲間が死ぬことを、家族が死ぬことを、いや、自分が誰かを殺すことを…殺せない復讐心?なんだそれは」 幼エレン「あまりに欲望が足りない。 そしてそういう奴は」ザッ 幼エレン「嫌いだ」ズズズズズ 鬼から黒く、忌々しい、霧状のものが溢れだす。 アルミン「」 幼エレン「だから俺がお前の代わりに家族の敵を討ってやろう」 幼エレン「体を寄越せ。 人間」ザッ アルミン「!」 ドッ アルミン「グハッ」 幼エレン「抵抗するための欲望も足りてない。 やはりお前は駄目だな…」 幼エレン「俺の主には相応しくない」 ーーー ー 鬼ミン「ふう…久しぶりの実体…久しぶりの現世か」 鬼ミン「弓よ」ヴィン 鬼ミン「意識を戻す。 ここはどこだ?」 ーーー ー• バカみてーな名前だな」• 」 リヴァイ「ちっ、やっぱアルミンは力が足りなかったか…」 ミカサ「どういうこと?」 リヴァイ「ミカサ、ユミル、ライナーお前らに月鬼ノ組初任務を与える」 ユミル「え?」 リヴァイ「天井を見ろ。 人喰いの鬼が出た。 お前らで始末しろ」 ー天井ー 鬼ミン「人間が…1,2,3,4,5,6人…おまけに全員鬼呪装備持ちか…これだから人間は厄介だ…」 鬼ミン「よし、危険な人間は…」ギリッ 鬼ミンが弓に矢をつがえる。 鬼ミン「皆殺しだ」バシュッ そして6本の同時に矢を放つ。 ドカンッっ!! ユミル「なっ!!? 」 ミカサ「くっ…」 ライナー「うわっ!」 リヴァイ「…」ビュンッ クリスタ「…」ピョンッ• 殺せるわけがない」 リヴァイ「家族?あれはどう見ても鬼だろ。 早く殺して楽にしてやれ」 ライナー「しかしあいつは…!」 リヴァイ「生いってんじゃねえ!」 ミカライユミ「」ビクッ リヴァイ「ここをどこだと思ってる?」 リヴァイ「月鬼ノ組だ。 バシュッバシュッバシュッ 鬼ミンが3本の矢を放つ。 しかし、 バキッバキッバキッ 3人とも矢を斬り落とす。 ミカサ「」ビュンッ 鬼ミン「グッ…!! 」 ミカサが剣を振るうが、弓で防がれる。 ライナー「うらぁ!」ビュンッ 鬼ミン「くっ…!」ギイイィィン ライナーの剣も防がれるが、 ライナー「うおおおぉぉぉ!」 バッ!! 鬼ミン「あっ!」 鬼ミンが弓を手離してしまう。 ヒュウウウゥゥゥ そして、4人とも天井から落ちていく。 これでもとに…!! 」ヒュウウゥゥ エレン「バカ!気を抜くな!鬼は武器じゃなくアルミンの中にいるんだぞ!! 」 ライナー「え…」 ドカッッ!!! 鬼ミンがライナーに攻撃する。 ライナー「グッ…!! 」 ユミル「くそっ…!! 」ビュッ ユミルが鬼ミンの首もとに剣を振るうが、 ミカサ「ユミル!アルミンを殺すつもり!!? 」 ユミル「くっ…」ピタ 鬼ミン「ふ…ふふふ…なんだそれ。 お前らおれを殺せないのか…!はは…ははははは」 そして4人とも地面に着地し、鬼ミンが弓を拾う。 ライナー「…!! 」 ライナー「アルミン正気になれ!! 鬼になんか負けてんじゃねえ!俺たちは仲間だろ!」 しかし、ライナーの言葉を無視して鬼ミンは無数の矢をつがえる。 ユミル「…もうだめだ。 2人ともやろう…」 エレン「中佐!状況と位とが見えません!」 リヴァイ「じゃあお前がアルミンを殺れ。 それであいつらを罪悪感から守ってやれ」 エレン「っ!! …」 クリスタ「しかしあの3人にはまだアルミンを殺すことは無理です。 もちろん私たちも…」 ライナー「…ざっけんな!ここで!こんなとこで仲間殺したら俺は吸血鬼どもをと同じになっちまうだろうが!! 」 ライナー「俺は!俺はもう二度と仲間を見捨てないって決めたんだ!だからアルミン!正気にもどれ!! 」 鬼ミン「うるさい…死ね」バシュッ ドドドドドドドドドドドドドドッッッッ!!!!! そして無数の矢が放たれる。 エレン「っ!! …」 エレン「おいアルミン!! お前はまた俺たちに助けてもらうのを待ってんのか!! 」 エレン「いいから出てきて今度は俺たちを守ってくれ!」 鬼ミン「うるさい…お前らも死ね」ギリッ 鬼ミンが1本の矢をつがえる。 ーーー ー 幼エレン「アルミン…大丈夫か?」 幼アルミン「うん…ありがと」 アルミン「ぼ…僕は………」 アルミン「僕は……」 アルミン「本当はもう逃げたくない。 みんなと肩を並べたい…」 アルミン「だから…だから僕に…」 アルミン「大切な人を守れるだけの力を……」 アルミン「敵を…」 アルミン「すべて壊せるだけの力を…………!」 アルミン「僕に寄越せよ!鬼!! ー ーーー 鬼ミン「…」ブルブル バシュッ 矢が放てれるが、エレンに向けてでなく、明後日の方向に飛んでいく。 アルミン「う…」 ダッダッダッ アルミン「うわあああああああああああ!!」ダキッ エレン「うおっと…」 アルミン「エレェン……」グスグス クリスタ「うそっ…」 ユミル「へっ…やるじゃねえか」 ライナー「も…戻ったのか!? 」 リヴァイ「だが今日それを見つけられただろ?」 リヴァイ「お前が生きる理由は今日お前を助けてくれた仲間を守ることだ」 アルミン「はいっ」 リヴァイ「復讐?」 リヴァイ「そんな小さなもんにとらわれんな」 リヴァイ「てめえも同じだエレン」 エレン「?」 リヴァイ「昔の家族はもう忘れろ」 エレン「え…」 リヴァイ「ここにいるのが新しい家族だ。 お前は今いる家族に命を懸けろ」 リヴァイ「過去には何もないぞ」 リヴァイ「あるのは未来だけだ」 エレン「はいっ!」• 」 リヴァイ「ああ」 エレン「じゃあ吸血鬼どもを狩れるんですね!!? また、トリップを使用することができます。 詳しくはをご確認ください。 トリップを付けておくと、あなたの書き込みのみ表示などのオプションが有効になります。 執筆者の方は、偽防止のためにトリップを付けておくことを強くおすすめします。 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#6 保育士灰崎くんとテツナちゃんのお話【青峰生誕編】

地面にたたきおとしてやるぜ

東京上野公園の 不忍池 ( しのばずのいけ )のそばに、ふしぎな建物がたちました。 両国 ( りょうごく )のもとの国技館をぐっと小さくしたような、まるい建物で、外がわの壁も、まる屋根も、ぜんぶ、まっ白にぬってあるのです。 そして窓というものが、ひとつもありません。 正面に小さな入口があって、その入口の上に「 中曾 ( ちゅうそ )夫人ロウ人形館」というかんばんがかかっています。 イギリスのロンドンにタッソー夫人のロウ人形館というのがあって、世界じゅうに知られています。 この不忍池のロウ人形館は、それをまねたものなのです。 タッソーという夫人の名をフランス読みにすると、チュッソーとなります。 「中曾夫人」というのはチュッソーをもじったものにちがいありません。 そのまるい建物は二階だてに地下室があり、その中を見物人の歩く道がぐるぐるまわっていて、道のかたがわ、または両がわに、いろいろなロウ人形の場面がつくってあるのです。 ロウ人形はみんな人間とおなじ大きさで、それに服がきせてあるのですが、ロウでできた顔がまるで生きているように見えるので、じつにきみがわるいのです。 ロンドンのタッソー夫人ロウ人形館には、歴史上のおそろしい場面や、血なまぐさい場面がいろいろこしらえてあって、女の人などは、ひとりでははいれないということです。 東京の中曾夫人ロウ人形館も、それをまねたものですから、やっぱり、ものおそろしい場面がおおくて、女の人や、子どもをつれた人は、きみわるがって、めったにはいりません。 せっかくつくったロウ人形館もいっこうはんじょうしないのでした。 ある土曜日の午後三時すぎのことでした。 ふたりの少年が、この中曾夫人ロウ人形館へやってきて、入口でキップを買って中にはいりました。 ひとりは 井上二郎 ( いのうえじろう )君という中学一年生、もうひとりは 野呂一平 ( のろいっぺい )君という小学六年生で、ふたりとも胸に少年探偵団のB・Dバッジをつけています。 井上君は、がっしりとした体格で背もたかく、柔道をならっている強い少年です。 野呂君は、少年探偵団員のなかでも、いちばんおくびょうものですが、すばしっこくて、ちゃめで、みんなを笑わせることがうまいので、人気者です。 ノロちゃんという愛称でよばれています。 ふたりは、ロウ人形館のうわさを聞いて、きょうはじめてやってきたのです。 探偵団員のことですから、きみのわるいようなものは、一度見ておきたいのでしょう。 おくびょうもののノロちゃんも、こわいもの見たさで、力の強い井上君にくっついて、やってきたのです。 ロウ人形館の入口をはいりますと、うすぐらい廊下がつづいています。 見物人の姿はひとりも見えません。 なんだか、あき家の中へはいっていくようで、きみがわるいのです。 「いやだなあ。 どうして、こんなにさびしいのだろう。 見物人は、ぼくたちだけじゃないか。 」 ノロちゃんが、井上君に、からだをくっつけるようにして歩きながら、いいました。 「いや、もっとむこうへいったら、見物人がいるかもしれないよ。 だが、だれもいなくったって、いいじゃないか。 ふたりきりのほうが、かえっておもしろいぜ。 」 井上君は、さびしいことを、よろこんでいるようです。 そのとき、うすぐらい廊下の右がわに、ぱっと四角な光がさしました。 そこのドアがひらかれたのです。 ドアの中には、あかるい電灯がついているのです。 その電灯の光を背中にうけて、まっ黒な人の姿がドアから出てきました。 「あなたがた、よく来てくれましたね。 わたしが、そこまで案内してあげましょう。 」 女の声でした。 ドアをしめると、その人のようすがわかるようになりました。 スカートの長い、まっ黒な服をきて、かみをみょうなゆい方にして、その上にちょこんと帽子をのせています。 井上君もノロちゃんも、本で見た明治時代の西洋婦人の絵を思いだしました。 「おばさんは、中曾夫人じゃありませんか。 」 ノロちゃんが、ふと気がついて、ぶえんりょにたずねました。 「ええ、わたしが中曾夫人です。 わたしがこのロウ人形館をたて、中にかざってあるロウ人形も、みんなわたしがつくったのです。 」 夫人はとくいらしくいって、さきにたって、ふたりをおくのほうへ案内しました。 「ごらんなさい。 これは世界各国の代表者が集まって、戦争をなくする相談をしているところですよ。 」 廊下の右がわがぱっとひろくなって、そこに、りっぱな広間があらわれました。 てんじょうからはギラギラひかる 水晶玉 ( すいしょうだま )のついたシャンデリアがさがり、 床 ( ゆか )にはまっかなじゅうたんがしきつめられ、壁には大きなだんろ、その上には二メートル 四方 ( しほう )もあるような鏡がはめこみになっています。 そのりっぱな部屋のまん中に大きなだ円形のテーブルがおかれ、そのまわりに十人ほどの世界の有名な政治家が、おもいおもいの服装で安楽いすにこしかけています。 その中には、アメリカのアイゼンハワー大統領の顔が見えます。 ソ連のフルシチョフ首相の顔が見えます。 それから、中国の 毛沢東 ( もうたくとう )主席の顔も、インドのネール首相の顔も、それから日本の岸首相の顔もならんでいます。 それらのロウでできた顔が、あるものはニヤニヤ笑い、あるものはしかめっつらをし、あるものは口をひらいて、なにかしゃべっているのです。 人間とおなじ大きさのロウ人形です。 顔と手足がロウでできていて、からだには、それぞれの国の服がきせてあります。 ほんとうに生きているようです。 いまにも動きだしそうです。 ふたりの少年はびっくりして、くいいるように、この場面を見つめました。 「どうです。 みんな生きているでしょう。 しかし、こんな世界会議は、まだひらかれていません。 まだ戦争をなくする相談は、なりたっていないのです。 この場面はわたしの空想ですよ。 こうして、世界の大きな国の代表者たちが一室に集まって、もう、けっして戦争をしないという、もうしあわせをしたら、どんなにいいかとおもうのです。 」 中曾夫人はそういって、なおも説明をつづけるのでした。 このロウ人形館の中には、こういう場面が二十以上あります。 むろん、政治家ばかりではありません。 有名などろぼうや名探偵の人形もあります。 アルセーヌ=ルパンが、 奇岩城 ( きがんじょう )の階段をかけおりているところや、シャーロック=ホームズが、悪漢モリアーティとたたかっているところもあります。 それから、石の 牢屋 ( ろうや )にとじこめられている鉄仮面、たかい塔の屋根を 金色 ( こんじき )のヤモリのように、はいあがっている黄金仮面、夜の銀座を四つんばいになって走っている青銅の魔人、地下室の石の階段をおりてくるどくろ仮面、劇場の廊下にあらわれた笑いの面、そのほか、たくさんの仮面の怪人や、人造人間の場面がつくってあります。 「この道を歩いていけば、それらの場面がみんな見られるのです。 では、ゆっくりごらんなさい。 わたしは仕事がありますから事務室へかえります。 」 中曾夫人はそういって、二少年を、その場におきざりにしたまま立ちさってしまいました。 ふたりは、しかたがないので、そのまま、おくのほうへ歩いていきました。 中曾夫人のいったとおり、つぎつぎと、いろいろな場面がありました。 怪盗ルパンや、名探偵ホームズのいる、いくつかの場面もありました。 そして、つぎの場面には……、 「あっ、 小林 ( こばやし )さん。 」 「あっ、 明智 ( あけち )先生。 」 井上君とノロちゃんは口々にさけんで、その方へ、かけよろうとしました。 そこに名探偵明智 小五郎 ( こごろう )と、その助手の小林少年が立っていたからです。 小林少年は少年探偵団の団長でもあります。 かけよろうとすると、すぐに、木のてすりにぶつかりました。 明智先生と小林少年は、そのてすりのむこうがわに立っているのです。 よびかけても、なにもこたえません。 こちらを見ようともしません。 ただ身動きもしないで、つっ立っているばかりです。 「あっ、これもロウ人形だよ。 ……おどろいたなあ。 先生や小林さんと、そっくりの顔をしている。 よくこんなににせたものだなあ。 」 井上君がすっかり感心して、うなるようにいいました。 それから、すこしいくと、鉄仮面の部屋でした。 石でくんだ、ふるい牢獄です。 たかいところに鉄棒のはまった小さな窓があるきりの、くらい牢屋です。 そこに、あの有名な鉄の仮面で顔をつつまれた人物が立っています。 フランスのルイ十四世の時代ですから、今から三百年近くも昔のことです。 バスチーユの牢獄に仮面をかぶせられた罪人がおりました。 その罪人は牢獄で病死したのですが、死ぬまで仮面をかぶせられたまま、一度も顔を見せたことがないのです。 いったい、この仮面の囚人は何者だったのでしょうか。 それはだれも知らない秘密でした。 フランスの小説家たちは、この秘密をいろいろに想像して鉄仮面の小説を書きました。 そのために、いっそう鉄仮面の名は有名になったのです。 日本にも二つの鉄仮面の小説がほんやくされています。 デュマ原作のものと、ボアゴベ原作のものです。 井上君とノロちゃんが見ているのは、バスチーユの石牢にとじこめられた鉄仮面です。 その前に五十歳ぐらいの、がっしりした男が腰をかがめて、なにかしゃべっているところです。 牢番なのでしょう。 鉄仮面は、口のところがちょうつがいでひらくようになっていて、食事をさせるときには、牢番がかぎで、それをひらいてやるのでした。 そうして口をふさいでおくのは、むやみにものをいわせないためなのでしょう。 井上君もノロちゃんも、「鉄仮面」の小説をよんでいたので、このロウ人形の場面を、いっそう、ものおそろしく感じました。 ふたりは、その場面のまえに立ちつくして、ながい間ながめていました。 「鉄仮面って、いったい、だれだったのだろうね。 」 「王さまの兄弟だったともいうし、大臣だったともいうし、 僧正 ( そうじょう )だったともいうし、まだいろいろの説があるんだよ。 とにかく、顔をかくしておかなければならないというのは、世間によく知られた、えらい人だったにちがいないよ。 」 井上君がノロちゃんに話してきかせました。 「あの鉄仮面の中に、どんな顔があるんだろうね。 」 「これは人形だから、鉄仮面の中は、からっぽだよ。 それとも……。 」 井上君は、そこまでいって、だまってしまいました。 もしあの鉄仮面の中にロウでつくった人間の顔があるとしたら、それはどんな顔だろうとおもうと、なんだか、こわくなってきたからです。 「つぎの場面へいこうよ」 井上君はノロちゃんの手をひっぱって、むこうへ歩いていきました。 ひとつかどをまがると、そこに、つぎの場面があるのですが、そのかどをまがったとき、ノロちゃんが井上君の手をぐっとひっぱって、あいずをしました。 「あいつに気づかれるといけない。 そっと、のぞいてみるんだよ。 ほらね、動いているだろう。 」 ノロちゃんは、井上君の耳に口をつけるようにして、ささやきました。 井上君が、まがりかどから、そっと顔をだして、鉄仮面の場面をのぞいてみますと、そこには、じつにふしぎなことがおこっていたのです。 ロウ人形の鉄仮面が歩き出したのです。 どこにかくしてあったのか、黒いマントのようなものを取り出して肩からはおり、木のてすりをのりこして通路に出ると、そのままスタスタと、むこうへ歩いていくではありませんか。 「ノロちゃん、あいつのあとを尾行しよう。 さあ、来たまえ。 」 井上君がノロちゃんの手をひっぱって、鉄仮面のあとを追いました。 鉄の仮面は目も口もふさがれているように見えますが、鉄板のあわせめに細いすきまがあって、そこから外がのぞけるのでしょう。 そうでなければ、鉄仮面があんなにはやく歩けるはずがありません。 それにしても、じつに異様なできごとでした。 ロウ人形とばかり思っていた鉄仮面が、いきなり歩きだしたのです。 むろん人形ではなくて、生きた人間にちがいありません。 鉄仮面は、ふたりが尾行しているとも知らず、通路をグングン歩いていきましたが、ヒョイと立ちどまって、いっぽうの壁をおしますと、そこに秘密のドアがあって、鉄仮面はすいこまれるように中へはいっていきました。 二少年も、すぐそこへいって、ドアをおしますと、しまりを忘れたらしくスーッとひらきましたので、ふたりとも中へはいりました。 うすぐらい細い通路があります。 一本道なので、そのまま歩いていきますと、ロウ人形館のよこての裏口のようなところへでました。 外はもう夕ぐれどきでした。 むこうに不忍池がひろがっています。 うしろには電車通りのネオンがひかっていました。 見ると、すぐむこうに一台の黒い自動車がとまっています。 鉄仮面はマントをひるがえして、そこにかけつけ、自動車の後部席へとびこみ、パタンとドアをしめました。 すると、それがあいずだったように、車はすぐに走りだし、むこうに遠ざかっていって、やがて夕やみの中にとけこむように、見えなくなってしまいました。 あいにく、そのへんに、ほかに自動車はなく、二少年は怪人のあとを追うことができませんでした。 それにしても、なんというへんてこなことが、おこったものでしょう。 ロウ人形館の人形が、とつぜん動きだし、館の外に待たせてあった自動車にのって、どことも知れず逃げだしてしまったのです。 二少年は、あまりのふしぎさに、しばらくは、ぼんやりと、そこに立ちつくしていましたが、やがて気を取りなおすと、このことを中曾夫人に知らせるために、正面の入口へといそぐのでした。 ふたりはキップ売場からはいって、廊下にあるさっきのドアをノックしました。 「おはいりなさい。 」 中から中曾夫人の声がこたえました。 二少年はドアをひらいて、中にはいりました。 そこは夫人の事務室らしく、まんなかに大きなデスクがあり、その上に、いろいろな書類がつみかさねてあります。 夫人がこしかけているうしろには大きな本だながあって、西洋の本や日本の本がぎっしりつまっています。 「ああ、さっきのぼうやたちですか。 ひどくあわてているじゃありませんか。 」 明治時代の洋装をして、帽子をかぶったまま、中曾夫人はいすから立って、二少年のほうへ近寄ってきました。 「鉄仮面が逃げだしたんです。 」 「裏口から出て、自動車にのって、どっかへいってしまいました。 」 「え、なんですって?」 夫人は、びっくりしたように、聞きかえします。 「あのロウ人形の鉄仮面が逃げたのです。 」 それを聞くと、夫人は笑いだしました。 「あなたがた、ゆめでも見たのですか。 ロウ人形が歩きだすなんて、そんなばかなことがあるもんですか。 」 「いいえ、ほんとうです。 うそだと思うなら、鉄仮面の場面を見てください。 あそこには牢番が残っているばかりです。 」 「よろしい。 では、見にいきましょう。 あなたがたも、いっしょに来てください。 」 夫人はそういって、さきにたって部屋の外へ出ると、グングンそのほうへ歩いていきました。 二少年もそのあとにしたがいます。 いろいろな場面をとおり過ぎて、鉄仮面の場面にたどりつきました。 「やっぱり、あなたがた、ゆめでも見たのでしょう。 鉄仮面は、あそこにいるじゃありませんか。 」 少年たちは「あっ。 」とおどろきました。 夫人のいうとおり、鉄仮面はいつのまにか、ちゃんと、そこへもどっていたではありませんか。 もう黒マントはぬいで、どこかへかくしてしまったらしく、もとのとおりの姿です。 「ふしぎだなあ、ゆめじゃありませんよ。 ぼくたちふたりが、この目で見たんです。 自動車にのって逃げてしまった鉄仮面が、どうして、ここへもどったのでしょう。 ぼくには、なにがなんだか、さっぱり、わけがわかりません。 」 井上君はそういって、しばらく考えていましたが、ふと気がついたように、 「ぼく、あの人形にさわってみてもいいでしょうか。 」 「ええ、よろしいとも、ふたりとも、中にはいって、さわってごらんなさい。 」 そこで、井上君とノロちゃんは、木のてすりをまたいで石の牢屋の中にはいり、鉄仮面のそばに寄って、そのからだにさわってみました。 からだをたたくと、コツコツ音がしました。 両手は、たしかに、つめたいロウでできていました。 足もよくしらべましたが、やっぱり、ズボンの中には、木のようにかたいものがあるばかりでした。 「へんだなあ。 これはたしかに人形です。 でも、こいつは、さっき歩いてここから出たのです。 そして自動車にのって、逃げていったのです。 」 井上君が、ふしぎでたまらないという顔で、つぶやきました。 おはなしはかわって、その日の夜のことです。 港 ( みなと )区の 有馬大助 ( ありまだいすけ )君という少年のおうちに、おそろしいことがおこりました。 鉄仮面はやっぱりロウ人形館からぬけだして、有馬君のおうちへ、しのびこんでいたのです。 有馬君のおうちは大きな西洋館で、おとうさんは、ある会社の社長さんでした。 大助君は、その長男で、小学六年生なのです。 大助君は、そのばん十一時ごろ、ふと目がさめて、お手洗いへいきたくなったので、パジャマのままベッドを出て、用をすませ、廊下をもどってきました。 その広い廊下のすみに、西洋のむかしのよろいがかざってあります。 銀色にみがいた鉄のよろいです。 おなじ銀色の西洋のかぶととほおあてをつけているので、まるで人間が、よろい、かぶとをきて、立っているように見えます。 夜なんか、その前をとおると、きみがわるいようです。 大助君は、なれているので、べつに、こわいとは思いませんでしたが、とおりがかりに、ふと、そのよろいを見ますと、どこかしら、いつもとは、ちがっているような気がしました。 へんだなとおもって、じっと見なおしました。 ああ、そうです。 かぶととほおあてがいつもとちがっているのです。 色はおなじ銀色ですが、形がちがうのです。 「あっ! 鉄仮面だっ。 」 大助君は、おもわず、心の中でさけびました。 大助君は、「鉄仮面」という小説を読んだことがあります。 いま、目の前にあるよろいの頭のところは、その小説のさしえにかいてあった鉄仮面と、そっくりではありませんか。 きみがわるくなったので、大助君は、そのまま、廊下のかどをまがりましたが、やっぱり気になるものですから、そのかどから、そっと、目だけだして、よろいのほうを見ていました。 すると、ク、ク、ク、ク……という、みょうな音が、どこからか聞こえてきました。 人間が声をたてないで、笑っているような音です。 もしかしたら、あの鉄仮面をかぶったよろいの中に、人間がかくれているのではないか、と思うと、大助君はゾーッと、かみの毛がさかだつような気がしました。 そのときです。 こんどは、もっとおそろしいことがおこりました。 鉄仮面の頭をもった西洋のよろいが動きだしたのです。 はじめは、ゆらゆらと、からだを前後に、ゆりうごかしていましたが、やがて、銀色のよろいがノッシ、ノッシと歩きだしたではありませんか。 大助君はびっくりして、逃げだそうとしましたが、あいては、そのまがりかどに大助君がかくれているのを、はやくも、さとったらしく、ぱっと、こちらへ、とびかかってきました。 そして、銀色にひかった鉄仮面が、大助君の目の前いっぱいにひろがり、銀色のよろいの手が、ギュッと、大助君の肩をつかみました。 「たすけてくれーっ……。 」 さけぼうとしましたが、その口を、いきなり、怪物の鉄の手でふさがれてしまいました。 それから、鉄仮面は大助君をだきあげて、寝室の中にはこび、ベッドのシーツをひきさいて、大助君にさるぐつわをはめ、手足をしばり、外に出てドアにかぎをかけると、そのまま、どこかへ立ちさってしまいました。 それから、しばらくして、鉄仮面は、有馬家の美術室に、そのぶきみな姿をあらわしました。 大助君のおとうさんの有馬さんは、まだおきていて、書斎で手紙を書いていましたが、美術室の仏像をしらべてみなければならないことがおこりましたので、美術室へやっていきました。 そして、ドアをひらくと、美術室の中に、みょうなものが動いているのが見えましたので、いそいでドアをしめ、ごくほそいすきまを残して、そこから部屋の中をじっとながめました。 美術室には、たくさん棚があって、そこにいろいろの美術品がならべてあるのですが、壁ぎわに金庫がおいてあります。 それには、美術品のなかでも、いちばんだいじなものが、しまってあるのです。 その金庫の前に西洋のよろいが、うずくまって、ダイヤルをまわしているではありませんか。 廊下においてあったよろいが、ここまで歩いてきて金庫をあけようとしているのです。 有馬さんは、よろいの頭が鉄仮面にかわっているとは、気がつきませんが、いずれにしても、よろいの中に人間がはいっていることはたしかです。 どろぼうが昼間のうちに、やしきにしのびこみ、よろいの中にかくれていて、夜がふけるのを待って、金庫の中のものをぬすもうとしてやってきたのです。 有馬さんは、そっとドアをしめて、いそいで書斎へひきかえしました。 そして、そこの卓上電話の受話器を取りあげると、知りあいの私立探偵明智小五郎の事務所をよびだすのでした。 「明智先生ですか。 わたし、いつかおせわになりました有馬です。 いま、わたしのうちに、へんなことが、おこっているのです。 廊下にかざってあった西洋のよろいの中に、だれかがはいって、美術室の金庫をあけようとしているのです。 金庫の中には『星の宝冠』というわたしの家の宝物が、はいっています。 すぐに来てくださいませんか。 ……むろん警察に知らせます。 しかし、これはどうも、ふつうのどろぼうじゃありません。 やっぱり、あなたに来ていただかないと、安心できないのです……。 」 そこまで話したとき、書斎のドアがスーッとひらきました。 そして、そこに銀色にひかる西洋のよろいがたっていたではありませんか。 「明智小五郎に電話をかけたな。 明智をよぼうというのか。 そうはさせないぞ。 」 鉄仮面のすきまから、しわがれた、ふとい声がもれてきました。 有馬さんは、あまりのことに、ぼうぜんと、立ちすくんだまま、ものをいう力もありません。 鉄仮面は、ツカツカと有馬さんのそばに寄ってきました。 そして有馬さんの手から受話器をひったくると、それを左手に持ち、右手にはピストルをかまえて、有馬さんが声を立てないようにおどしつけながら、電話口の明智探偵に話しかけるのでした。 「明智君だね。 おれはどろぼうだ。 てごわいどろぼうだ。 せけんでは、おれのことを 恐怖王 ( きょうふおう )とよんでいるよ。 このうちへは『星の宝冠』をもらいにきた。 金庫のあけかたも、ちゃんと研究しておいたので、わけなく宝冠を手にいれることができたよ。 ハハハハ……。 だから、もうきみは来なくてもよろしい。 来ても、しかたがないのだ。 きみがここへつくころには、おれは遠くへ立ちさっているからね。 」 すると、電話のむこうから、明智探偵のおちついた声がそれに答えました。 「きみが来るなといっても、ぼくは有馬さんにたのまれたのだから、いかなければならない。 きみは逃げだすだろうが、どこへ逃げても、きっと、つかまえてみせるよ。 きみは、そのうちに、なにかてがかりを残している。 指紋なんか、いくらふきとってもだめだ。 もっとほかの、目に見えないてがかりが、いくつも残っているはずだ。 ぼくはそれをさがす。 そしてきみが何者であるかを、つきとめ、かならず、とらえてみせる。 ハハハ……。 それが、ぼくの仕事だからね。 」 名探偵の自信ありげな声を聞くと、鉄仮面はいらいらしてきました。 「よしっ、それじゃあ、かってにしろ。 おれのほうにも、考えがある。 いまに、こうかいするんじゃないぞ。 きさまは、おれが、どれほどの力を持っているか、まだ知らないのだからな。 ワハハハハ。 」 そこで、いきなり電話をきると、こんどは、べつの番号をまわして、だれかをよびだし、暗号のようなことばで、なにかしばらく話していましたが、そばに立っている有馬さんにも、そのいみは、すこしもわかりませんでした。 そのあいては、おそらく、どろぼうの手下かなんかだったのでしょう。 おはなしかわって、ここは明智探偵事務所の一室です。 「ハハハハ……、おもしろくなってきたぞ。 てごわいどろぼうが、あらわれたぞ。 小林君、有馬さんの有名な『星の宝冠』がぬすまれてしまった。 そいつから、いま電話がかかったのだ。 ぼくに来ちゃいけないって、いったよ。 やっぱり、ぼくがこわいんだね。 だから、すぐいくことにする。 自動車をよんでくれたまえ。 」 明智探偵が、そばにいる助手の小林少年にいいつけました。 「先生ひとりですか。 ぼくは、いかなくていいのですか。 」 小林少年が、ふふくそうにいいます。 「きみは、留守番だ。 ぼくに万一のことがあったとき、ぼくをたすけるのが、きみの役だからね。 きみとぼくとは、なるべく、はなれているほうがいい。 」 そういわれると、小林少年も、かえすことばがありません。 すなおにハイヤーの会社へ電話をかけました。 しばらくすると、明智の事務所のある高級アパートの入口で、自動車のクラクションがなりました。 「おむかえにきました。 」というあいずです。 明智探偵は小林少年に留守をたのんで、ひとりで玄関から出てきました。 そして、そこの大通りにとまっている自動車のほうへ歩いていきます。 すると、そのとき、へんなことがおこったのです。 アパートの前のくらやみの中から、ひとりの男が、とびだしてきました。 三十ぐらいの、よたもののようなやつです。 その男が明智探偵のうしろへ、そっと近寄っていくのです。 自動車のドアはあいていました。 明智はその中へはいろうとしましたが、なにを感じたのか、はっとしたように身をひきました。 いつもの自動車とちがっていることがわかったからです。 運転手もへんなやつだし、うしろの席に、見かけたことのない男が腰かけていたのです。 身をひこうとすると、うしろから、どんと、ぶつかってくるものがありました。 さっき、やみの中からあらわれた、よたものみたいなやつです。 そいつは、明智のからだをグングン自動車の中へ、おしこもうとします。 すると、中にいたやつも腰をあげて、明智の首に腕をまきつけ、ちからいっぱい、車の中にひっぱりこむのです。 あいてはふたりのうえ、ふいをつかれたので、さすがの名探偵もどうすることもできません。 もう十二時に近い夜ふけですから、人どおりもなく、だれもたすけにきてくれるものはありません。 しかたがないので、大きな声でさけぼうとしました。 すると悪者は、はやくも、それをさっして、白いハンカチのようなもので、明智探偵の口と鼻をふさいでしまいました。 ツーンと頭にひびくような、いやなにおいがしました。 麻酔 ( ますい )薬です。 ……まもなく、名探偵は、自動車の中で気をうしなっていました。 見まわすと、なかなか、いごこちのいい部屋です。 せまい部屋ですが、一世紀もまえのフランスの客間を思いだすような、ぜいたくな、うつくしい部屋でした。 てんじょうからは水晶玉でかざったシャンデリアがさがり、白くぬった、きゃしゃなテーブル、ふかぶかとしたクッションの、りっぱな長いす。 明智は、やっと思いだしました。 「ああ、ぼくは、悪者につかまえられたのだ。 そして、麻酔薬をかがされて、気をうしなってしまったのだ。 」 まだしばられているのではないかと、手足を動かしてみましたが、まったく自由でした。 ただ長いすの上によこになって、グッスリねむっていたらしいのです。 そのとき、明智が目をさますのを待ちかねていたように、ドアがあいて、ひとりのうつくしい少女がはいってきました。 高校生ぐらいの年ごろです。 手にはコーヒーをのせた銀のぼんをささげています。 「お目ざめになりまして?」 少女は銀のぼんをテーブルの上において、やさしく明智探偵に話しかけました。 「ほんとうに、たいへんでしたわね。 でも、どこもおいたみになりません。 」 明智探偵は、ゆめみたいな気持で、しばらくぼんやりしていましたが、どうもわけがわかりません。 「ここは、いったいどこの、おうちなんでしょう? そして、あなたは?」 と、たずねてみました。 「あなたを、おたすけしたひとのうちですわ。 あたしは、そのうちのむすめです。 」 「そうでしたか。 ぼくは悪者のために自動車におしこまれ、麻酔薬をかがされて気をうしなってしまったのですが、あれから、どのくらい時間がたったのでしょう。 そして、ここは、やっぱり東京なのでしょうか。 」 「ええ、まあ、そうですの。 でも、あなたは、まだ、いろいろなこと、お考えにならないほうがよろしいですわ。 」 「なあに、もう、だいじょうぶですよ。 どこも、なんともありません。 すこし、頭がフラフラするぐらいのものです。 」 明智はそういって、長いすの上に、おきなおってみせました。 しかし、そうして身をおこしてみると、やっぱり、からだがほんとうでないのか、部屋ぜんたいがグラグラゆれているように感じて、おもわずいすの上に手をつきました。 「まだ、だめです。 めまいがします。 なんだか、この部屋がフワフワと、宙にういているような気持です。 」 「ほら、ごらんなさい。 むりをしてはいけませんわ。 」 「しかし気分はなんともないのです。 どうか、ご主人にあわせてください。 おれいをいわなければなりません。 」 「そんなことはいいんですの。 それに、いま主人はおりませんし……。 」 そのとき、明智は、この小部屋のつくりかたが、どうも、ふつうでないことに、やっと気がつきました。 「おやっ、この部屋には窓がひとつもありませんね。 だから、昼間でも、こうして電灯をつけておくのですか。 みょうな部屋ですね。 いったい、いまは昼ですか、夜ですか。 」 「夜ですの。 いま八時ですわ。 」 「いく日の?」 「十六日。 」 少女はそう答えて、口に手をあててクスクス笑いました。 「ぼくが自動車におしこめられたのは、十五日のばんだから、あれから、まる一日たっているわけだな。 」 と、ひとりごとをいったものの、なんだかへんな感じです。 この少女の、みょうになれなれしい口のききかた、窓のひとつもない部屋、それに、いつまでたっても、部屋がユラユラゆれているような感じ。 「この部屋は、いったい、何階にあるのです。 なんだか、いつもユラユラしていて、高い塔の上にでも、いるような気持ですね。 」 「そうかもしれませんわ。 」 少女は、心の中で笑っているような口ぶりです。 「でも、いごこちは、わるくないでしょう。 しばらく、おとまりになる間、できるだけ、お心持ちのいいようにと、いいつけられていますのよ。 お気にめさないことがありましたら、なんでも、おっしゃってくださいまし。 」 少女はなかなか、おせじがいいのです。 「しばらく、おとまりですって? じょうだんじゃありません。 ぼくは、だいじな用件があるんですよ。 」 明智探偵は、あきれかえってしまいました。 まるでキツネにつままれたような気持です。 「いいえ、そんなにおあせりになっては、だめですわ。 なにもお考えなさらないほうがいいわ。 」 少女は、まるで、きのどくなきちがいでもなぐさめるような調子で、 「では、のちほど、またまいりますわ。 さめないうちにコーヒーを、めしあがってくださいまし。 」 少女はそういいすてて、逃げるようにドアのほうへいきますので、明智は、「まってください、まってください。 「ホホホホ……、ほらごらんなさい。 ですから、じっとしていらっしゃるほうがいいのよ。 」 少女はあざけるようにいって、ドアのほうへ歩いていきました。 気がつくと、明智探偵の足くびに、鉄の輪がはめてあって、それについた鉄のくさりが、長いすのあしに、くくりつけてあることがわかりました。 まるで動物園のクマのように、そのくさりののびるだけしか、動けないのです。 「きみ、きみ、ぼくはお手洗いにいきたいんだ。 このくさりを、はずしてくれたまえ。 」 明智は、ドアをしめようとしている少女に、大きな声でよびかけました。 それを聞くと、少女は、しぶしぶもどってきました。 「ほんとうですか。 ほんとうに、お手洗いにいらっしゃるのですか。 」 「ほんとうです。 どうか、くさりをといてください。 」 それをきくと、少女は明智の足もとにうずくまり、ポケットから小さなかぎをだして、足くびの鉄の輪をパチンとはずしてくれました。 ドアのそとの廊下にある手洗い所へいって、そこから出ますと、明智はニコニコして、いうのでした。 「これで、ぼくは自由の身になったわけだね。 逃げようと思えば逃げられるね。 」 すると、少女は、びっくりして、いきなり服のうしろから小さいピストルを取りだし、明智にねらいをさだめました。 「逃げてはいけません。 どうしたって、逃げられないのです。 どうか、逃げないでください。 おねがいです。 」 少女は、かなしそうな顔で、ほんとうに、たのんでいるのです。 明智は、にわかに笑いだして、 「じょうだんだよ、じょうだんだよ。 逃げたりなんかするものか。 」 と、安心させておいて、少女がゆだんするのをみすまして、あいてにとびつき、そのピストルをうばいとってしまいました。 「あっ、いけません。 あなたは、なにもごぞんじないのです。 いけません、いけません……。 」 と、とりすがる少女をふりはらって、走っていこうとしますと、とつぜん、明智の背中に、コツンと、かたいものがあたりました。 「手をあげろ。 ピストルをなげろ。 でないと、きみの背中にあながあくぞ。 」 背中のかたいものは、ピストルのつつ口でした。 そして、ふたりのふくめんの男が、そこに立っていたのです。 明智探偵は、もとの部屋につれもどされ、こんどは長いすではなくて、ふつうのいすに、なわでぐるぐるまきに、しばりつけられてしまいました。 「ハハハハ……、おとなしくしていれば、足の鉄の輪でよかったのだが、つまらないまねをするもんだから、身動きもできなくなってしまった。 ざまあみるがいい。 」 ふたりの男は、にくにくしげに、いいすてて、少女といっしょに外へ出ていってしまいました。 そして、ドアにはパチンとかぎがかけられたのです。 明智探偵はいすにしばりつけられたまま、しばらくは、ジッとしていました。 なかなか、てごわいあいてです。 少女ひとりと思ってゆだんしたのが、いけなかったのです。 「それに、この部屋は、どうもへんだ。 」 だいいち、窓というものが一つもありません。 それに、まるで高い塔のてっぺんにでもいるように、部屋ぜんたいがフワフワとたえず、ゆれているのです。 「いや、それだけじゃない。 この部屋には、なにか、しかけがしてあるような気がする。 さっき目をさましたら、すぐに少女がはいってきたのも、ふしぎだ。 どこかから、だれかが、のぞいているのかもしれない。 」 明智探偵はそう思って、しばられたまま、ぐるっと部屋の中を見まわしました。 壁にはいろいろな油絵や、南洋の土人のつくったお面や、おかしな道化師のお面などがかけてあります。 明智探偵は、その壁を、あちこちとながめていましたが、やがて、その目は道化師の面の上に、ぴたりと、とまってしまいました。 壁のようにおしろいをぬった顔、まっかな、まんまるい鼻、両方のほっぺたに、あかい日の丸、糸のようにほそい目の、上下のまぶたに、たてに黒い線がかいてある。 そして、白赤だんだらのとんがり帽子をかぶった西洋道化師の土でできたお面です。 明智探偵は、そのお面を、なぜか、あなのあくほど見つめているのです。 探偵の目とお面の目とが、まっ正面にむきあって、まるで、にらめっこでもしているようにみえました。 しばらく、そうしているうちに、明智探偵の顔がニコニコと笑いの表情になりました。 すると、ああ、ごらんなさい。 壁にかけてある道化師のお面もニヤッと笑ったではありませんか。 「アハハハハ……、おい、そこの、ピエロ君。 きみは生きた人間だね。 壁のあなから顔を出して、お面のようにみせかけているんだね。 そうして、ぼくを見はっているんだろう。 」 明智に見やぶられて、壁のお面がかっと目を見ひらき、口をうごかして答えました。 「やっと、わかったね。 だが、名探偵明智小五郎にしては、ちと、おそすぎたよ。 」 その壁には、もともと、土でできた道化師のお面がかけてあったのですが、悪者は、じぶんの顔に、そのお面とおなじけしょうをして、ときどき壁のあなからお面をひっこめ、そのあとへ自分の顔をつきだして、明智のようすを見はっていたのです。 「しかし、そんなことをしていては、きみもくたびれるだろう。 どうだ、こちらへ、はいってこないか。 」 明智が、まるで、友だちにでもいうように話しかけました。 「そりゃ、くたびれるがね。 だが、いくらくたびれたって、きみのさしずはうけないよ。 」 道化仮面が、あつい、まっかなくちびるを動かして答えます。 「いや、じつは、きみにたのみがあるんだよ。 」 「たのみ? ずうずうしいやつだな。 まあ、いってみるがいい。 どんなたのみだ。 」 「タバコがすいたいんだ。 」 「フフン、タバコがすいたいから、なわをとけというのか。 そうはいかない。 」 「いや、なわはとかなくてもいい。 ぼくのポケットのシガレットケースから、タバコを一本だして、ぼくの口にくわえさせ、火をつけてくれればいいんだ。 まる一日タバコをすっていないので、食事よりなにより、まずタバコがほしいのだよ。 」 「アハハハ……、そうか。 おれもタバコずきだから、その気持はわかるよ。 よし、それじゃ、そこへいって、タバコをすわせてやろう。 」 そういったかとおもうと、道化仮面がひっこんで、そのあとへ、ほんとうの土のお面がいれかわりました。 やがて、ドアがひらき、顔だけ道化師で、からだはぴったり身についた黒シャツと黒ズボンの男が、部屋にはいってきました。 「シガレットケースは、どこにはいっているのだ。 」 「ここだよ。 右の内ポケットだよ。 」 男が探偵の胸に手をいれてケースを取りだすと、パチンと、それをひらきました。 「なんだ、一本しかないじゃないか。 」 「一本でもいいよ。 ともかく、すわせてくれ。 」 「さあ、それじゃ、これをくわえるがいい。 ライターをつけてやるからな。 」 道化仮面の男が、一本のタバコをくわえさせ、火をつけてくれました。 「まあ、ゆっくりやりたまえ。 おれもあっちで、ひとやすみするからな。 」 道化仮面はそういって、外へでていきました。 あとにのこった明智探偵はいすにしばりつけられたまま、さもうまそうに、タバコをすいながら、壁の道化師の面をジッと見つめました。 土でできたお面です。 まだ人間の顔とは、いれかわっていないのです。 いつまでたっても、いれかわるようすがありません。 道化仮面の男は、ほんとうに、ひとやすみしているのでしょう。 明智探偵はタバコをくわえたままニヤリと笑い、スパスパとおおいそぎで、タバコをすいだしました。 なにかわけがありそうです。 タバコが、くちびるのそばまで、もえていきました。 ふしぎなことに、もえた灰はパラパラとおちますが、タバコの長さはすこしもかわらないのです。 しかも、もえたあとが、銀色にピカピカひかっているではありませんか。 明智探偵は、タバコをくわえたまま、グッとうつむいて、胸をしばってあるなわに、タバコの銀色のところを近づけました。 タバコの火で、なわを焼ききるつもりでしょうか。 それはだめです。 新しいあさなわですから、とてもタバコの火をつけることはできません。 明智は、タバコの火のところを、そのあさなわに、こすりつけて消してしまいました。 すると、あとには銀色の細いナイフの刃のようなものが残りました。 明智はその刃でゴシゴシと、あさなわをこすりはじめたのです。 ナイフの刃には 柄 ( え )がついていて、その柄を歯でぐっとかみしめ、顔ぜんたいを上下に動かして、あさなわをこするのです。 タバコの中に、ほそいナイフがかくしてあったのです。 それを一本だけ、シガレットケースに入れておいて、悪者に、そのタバコを口にくわえさせてもらったのです。 悪者のほうでは、明智がほんとうにタバコがすいたいのだと思って、べつにうたがいもせず、それをくわえさせて火をつけてやりました。 ああ、なんという、うまい考えでしょう。 このナイフ入りのタバコをもっていれば、いくらしばられても、平気です。 それで胸のなわを一本だけきってしまえば、あとは、なんなく、なわをとくことができるからです。 二分間ほど、ゴシゴシやっていますと、なわがプッツリきれました。 それから、からだをゆり動かすと、いくえにもまいたなわが、だんだんとけていって、とうとう手も足も自由になりました。 いすをはなれて、そっとドアに近寄り、そとのようすに耳をすましたうえで、しずかにひらきました。 だれもいないようです。 廊下に出ました。 まっすぐに、すすんでいきます。 廊下のつきあたりに、せまい階段がありました。 足音をしのばせて、それをのぼると、ドアにつきあたりました。 また耳をすましてから、そっとそれをひらきました。 外はまっくらです。 そして、ふしぎなことに、海のにおいがしました。 「おーい、にげたぞーっ。 明智探偵がなわをきって、にげたぞーっ。 」 どこからか、さけび声が聞こえてきました。 明智は、まっくらな中をかけだしました。 足もとがユラユラとゆれているような気がします。 うしろから、パン、パンと、ピストルの音がしました。 おどかしに、わざとねらいをはずしてうったのでしょう。 明智探偵は、むちゅうになって走りました。 十メートルほどいくと、なにか、かたいものにぶつかりました。 階段のてすりのようなものです。 「ワハハハハ……、おどろいたか、明智先生。 ここをどこだと思っているんだ。 きみはおよぎができるのか。 いやさ、この広い海がおよぎきれるとでもいうのか。 」 道化仮面の声です。 はっとして、てすりの下をのぞくと、星あかりに、それとわかる水、水、水。 まっ黒にうねる、はてしもしらぬ広い海です。 ああ、ここは船の上だったのです。 どこともしれぬ広い海をすすんでいる汽船の上だったのです。 さっきの部屋に窓のなかったのも、ユラユラゆれているように感じたのも、そのためでした。 まさか汽船の上とは、気がつきませんでした。 ゆうべ自動車の中で、ねむらされてから、東京港で汽船にのせられ、その汽船がこの広い海へすすんで来たのでしょう。 じぶんで「恐怖王」となのっている怪盗は、こんな大きな汽船までもっているのです。 よほど大じかけな盗賊団にちがいありません。 その首領の「恐怖王」とは、いったいどんなやつでしょう。 もしかしたら、さっき、船室の壁から顔を出していた道化仮面の男が、その「恐怖王」なのではないでしょうか。 明智探偵は盗賊のために、汽船の 甲板 ( かんぱん )のてすりまで追いつめられたのです。 もう海へとびこむほかに逃げみちはありません。 探偵は水泳はよくできました。 しかし、この広い海へとびこんで、陸地までおよぎつくなんて、とてもできることではありません。 さすがの名探偵も、ぜったいぜつめいです。 明智は、とっさに、いそがしく頭をはたらかせました。 こういうときこそ、おちつかなければいけない。 そして、うまい知恵をしぼりださなければならない。 「ワハハハ……、どうだ、明智先生、この海がおよげるかね。 ワハハハハ……。 」 道化仮面の声が、近づいてきました。 そのとき、明智の頭にチラッと名案がうかんだのです。 「このくらいの海が、およげないで、どうするものかっ。 」 そうさけんでおいて、足もとにころがっていた小さなたるを、海の中へけるがはやいか、てすりをのりこし、さかさまになって、海へとびこんだように見せかけました。 そのとき、海面におちたたるがボチャーンと、まるで人間がとびこんだような水音をたてました。 しかし、とびこんだのはたるばかりで、明智探偵は船のふなべりにぶらさがって、身をかくしていました。 いのちがけの、はなれわざです。 「やっ、とびこんだぞ。 ボートを出せ、ボートを出せ。 汽船のトモに、ふつうのボートが一そうつないであり、盗賊たちはそのボートをたぐりよせ、なわばしごをつたって、それにのりこむとオールをあやつって、そのへんの海面をしきりにさがしはじめました。 明智探偵はふなべりからぶらさがっているのですが、黒い服をきているので、遠くからは気がつきません。 そのまま、はんたいがわへ、こぎさっていきました。 もうだいじょうぶです。 明智はふなべりをはいあがって、まっくらな甲板に身をふせました。 そこに、なにかの箱がおいてあったので、その箱のかげにかくれてじっとしていました。 すると、コトコトと、甲板を歩いてくる足音が聞こえます。 むろん船の上には、まだ賊のなかまが残っているはずです。 そいつが海をこぎまわっているボートを見るために、やって来たのかもしれません。 箱のかげの明智は、あいてのやって来るはんたいがわにまわって、そこにねそべってじっと息をころしていました。 「おーい、明智はみつかったかあ……。 」 おやっ、聞きおぼえのある声です。 もしかしたらと、そっと箱のかげから顔を出してのぞいてみますと、そいつは道化仮面のあの男でした。 どうも、こいつが首領らしいのです。 首領とすれば鉄仮面にばけたやつ、そして「恐怖王」となのる、あの悪人にちがいありません。 明智探偵は、じっと、そいつのうしろ姿を見つめました。 右手にピストルをにぎっています。 星あかりに、それがぼんやりと見えるのです。 「かしらあ……、どこへ、もぐっちゃったのか、どうしても、みつかりませんよう……。 」 下のボートからさけんでいるのが聞こえました。 「そんなはずはないぞう……。 船のそこに、くっついているかもしれんから、船のまわりを、ぐるっと、まわってみろよう……。 」 道化仮面が、さけびかえしました。 そのときです。 明智探偵は、箱のかげから、ぱっと、とびだして、道化仮面にぶつかっていきました。 そして、まずピストルを、たたきおとしてしまったのです。 「やっ、きさま、だれだっ……。 」 道化仮面は、いきなりくみついてきました。 そして、ふたりは、とっくみあったまま、まっくらな甲板の上に、ころがってしまいました。 それから、大格闘がはじまったのです。 上になり、下になり、ふたりは、まっくらな甲板の上をゴロゴロと、ころがりまわっていましたが、とうとう明智が上になり、道化仮面はくみしかれたまま動かなくなってしまいました。 明智は柔道の手で、あいてののどをしめ、きぜつさせてしまったのです。 あたりを見まわしましたが、甲板には人かげもありません。 ふたりは、だまってとっくみあっていたので、船室にいる部下たちはなにも知らないのです。 明智探偵は、ぐったりとなった道化仮面のからだを、甲板のものかげへひっぱっていって、じぶんの服をぬいで、あいてにきせ、あいての道化仮面をはずして、じぶんの顔にかぶり、とんがり帽子もとって、じぶんの頭にかぶりました。 人間のいれかわりです。 ぐったりとたおれているのが明智探偵で、立っているのが道化仮面の恐怖王としか思われません。 明智探偵は、なにか冒険をやらなければならないようなときには、ワイシャツの下に、ぴったり身についた黒シャツと黒のズボン下をつけて出ることにしていました。 きょうも、それを着ていたので、仮面さえつけて、服やワイシャツをぬぎさえすれば、賊の首領になりすますことができるのでした。 それから、ながいなわをもってきて、首領の手足をぐるぐるまきにしばり、さるぐつわをはめたうえで、首領のからだの急所をぐっとついて、息をふきかえさせました。 息をふきかえしても、賊は手足をしばられているうえに、さるぐつわをはめられているので、どうすることもできません。 明智は、そのへんにまるめてあったズックのきれをひろげて、首領のからだにかぶせました。 そして、じぶんは甲板におちていた、さっきのピストルをひろいとると、賊の首領になりすまして、船室へはいってくるのでした。 そして、いちばんりっぱな部屋へはいっていき、あたりを見まわして、つくえの上のよびりんのボタンをおしました。 すると、ひとりの部下があらわれ、 「かしら、なにかごようで……。 」 と、たずねました。 「うん、おまえは知っているだろう。 れいの『星の宝冠』を、おれがどこへしまったか、いってみろ。 」 明智は賊の首領のドラ声をまねて、わざとらんぼうにいいました。 「へっ、かしらは、じぶんで、しまっておいて、忘れちゃったんですかい。 」 部下は、へんな顔をして、聞きかえします。 「いや、おれはむろん知っているよ。 だが、おまえが知っているかどうか、ためしてみるんだ。 さあ、どこだ。 いってみろ。 」 「きまってるじゃありませんか。 いつも、かしらが、いちばんだいじなものをしまっておく、その 戸棚 ( とだな )ですよ。 」 「うん、そうか、ここだな。 だが、かぎがかかっている。 おまえはかぎがどこにあるか知っているか。 」 「つくえのひきだしですよ。 右がわのいちばん上のひきだしの、手帳の間にはさんであるのを、かしらは忘れたんですかい。 」 「忘れるもんか。 ちょっと、おまえを、ためしてみたんだよ。 よしっ、それじゃあ、もう用はない。 あっちへいってよろしい。 」 部下の男は、そのまま、ひきさがっていきました。 道化仮面をかぶって、首領とそっくりのかっこうをしているので、これが明智探偵の変装だなどとは、うたがってさえみなかったのです。 明智はそのかぎをだして、戸棚をひらき、 紫 ( むらさき )のふろしきにつつんだ「星の宝冠」の箱を取りだし、それをひらいて中をあらためました。 キラキラと星のようにきらめく、無数の宝石をちりばめた黄金の宝冠です。 さすがの名探偵も、そのうつくしさに、しばらくは、ぼんやりと見とれているばかりでした。 明智はそれをもとどおりにつつんで、こわきにかかえると、また後部甲板へとびだしていきました。 とちゅうで、部下たちの船室の窓の前をとおりましたが、だれも首領をうたがうものはありません。 甲板のはずれにたって、まっくらな海を見おろしますと、ちょうどボートが汽船をひとまわりして、帰ってきたところでした。 明智は道化仮面の顔を、ふなべりからつき出すようにして、ボートの部下たちに見せました。 「かしらあ、だめですよう。 いくらさがしても、なんにもいませんよう。 明智のやつ、サメにでも、くわれちゃったんでしょう。 」 ボートから、部下のさけぶ声が聞こえてきました。 「よろしい。 それじゃあ、もうさがすのをやめて、あがってこい。 」 明智は首領の声をまねて、命令しました。 すると、三人の部下はボートを船尾からさがっている 綱 ( つな )にくくりつけて、なわばしごをつたって甲板へあがってきました。 「やあ、ごくろう。 部屋にはいって、いっぱいやるがいい。 ……明智先生、とうとうおだぶつとはいいきみだ。 これでもう、じゃまものが、なくなってしまったから安心して仕事ができるというもんだ。 」 明智はあくまで賊の首領になりすまして、ふてぶてしく、こんなことをつぶやいてみせるのでした。 部下たちが船室へはいってしまうと、明智は、さっき、かれらがあがって来た、なわばしごをつたって、下のボートへとおりていきました。 名探偵はこうして、まんまと、目的をはたしたのです。 敵にとらわれの身となりながら、賊の首領だけをそっとたおして、首領になりすまし、有馬さんの「星の宝冠」をとりもどして、ボートにのりうつることができたのです。 ボートにのりうつると、綱をといて、まっくらな海の上を、東京の方角にむかってこぎはじめました。 さいわい、波はありません。 大きなうねりが、のたりのたりと、うってくるばかりです。 大きなオールを、ひとりで二本あやつるのはむずかしいので、明智はくふうをして、一本のオールを 和船 ( わせん )の ろのようにつかって、ボートをこぎました。 みるみる、汽船との間がへだたっていきます。 二百メートル、三百メートル、そして、五百メートルもへだたったころには、大きな汽船の姿さえ夜のやみにとけこんで、はっきりとは見えなくなってしまいました。 そのとき、汽船では、大さわぎがおこっていました。 首領の姿がどこにも見えないのです。 船じゅうさがしまわっても、どうしてもみつかりません。 もしやと思って明智探偵をしばりつけておいた部屋へいってみるとなわがバラバラにとけて、もちろん明智の姿はかげも形もありません。 いよいよたいへんです。 首領も、どっかへ消えうせてしまったのです。 手わけをして、もういちど船の中をさがしまわりました。 ひとりの部下が懐中電灯をてらして、後部甲板をあちこちと歩きまわっていました。 すると、どこかで、コトコト、と音がするのです。 「だれだっ……。 」 と、どなってみても、なんの答えもなく、ただコトコトとおなじ音がつづくばかりです。 「へんだぞ。 」とおもいました。 じっと耳をすまして、音のする方角を聞きさだめておいて、そこを懐中電灯でてらしてみました。 ズックのきれが動いています。 その下に、なにか生きものが、かくれているのかもしれません。 部下の男は、こわごわ、そばに近づくと、ズックをつかんで、ぱっと、はねのけました。 「やっ、明智だなっ……。 」 そこには、黒い背広をきた男が手足をしばられて、ころがっていました。 部下はそれを見て、てっきり明智探偵と思いこんだのです。 さるぐつわで口のへんをしばられているのですし、服が明智の背広ですから、ひとめ見て、明智と思ったのはむりもありません。 「どうした、どうした。 」 「なに、明智のやろうが、しばられているって?」 「すると、かしらが明智をしばったのかな。 」 くちぐちに、そんなことをいいながら、たおれている男に近づきました。 「おやっ、これは明智じゃないよ、明智は、もっとモジャモジャの頭をしていたはずだぜ。 」 「なんだとう。 これが明智でなけりゃ、いったい、だれだっていうんだ。 」 「それが、わからねえんだよ。 へんだなあ。 」 そのとき、たおれていた男が、くくられた両足を高くあげて、ドカンと床板をたたきつけました。 かんしゃくをおこしているようです。 「もうすこし、顔をよく見てやろうじゃねえか。 これをとってね。 」 ひとりの部下が近よって、男のさるぐつわのきれを、とりはずしました。 おお、その下から、あらわれた顔は! 「ひゃあっ、かしらだっ。 かしらだぜ、こりゃあ。 」 「はやく、なわをとかねえか。 みんな、なにをぐずぐずしてやがるんだ。 」 てれかくしのように、そんなことをいいながら、部下たちは、首領のなわを、ときほどきました。 「ばかやろう。 なんてドジなやろうどもだっ。 明智のやつは、おれの道化仮面をかぶって、おれとそっくりの姿になって、どっかにかくれているんだ。 手わけをして、あいつをさがしだせっ。 」 「ところが、かしら、船の中は、もうすっかり、さがしちゃったんです。 しかし、あいつの姿はどこにもありませんよ。 」 「おやっ、おかしいぞっ。 」 部下のひとりが、とんきょうな声をたてました。 「かしら、かしら。 かしらはさっき、甲板から、ボートにのっているおれたちに、もういいから、あがってこいって、よびかけましたかい。 」 「そんなこといやあしない。 それは、おれじゃあないよ。 」 「するってえと、あれが明智だったかな。 たしかに、道化仮面をかぶってましたよ。 」 「いや、まてまて。 かしら、たいへんなことになりましたぜ。 」 またべつの部下が、いきせききって、いうのです。 「なんだ、なにがたいへんだ。 」 「かしらは、さっき、かしらの部屋へおれをよんで、『星の宝冠』はどこにはいっているかって、聞きゃあしないでしょうね。 」 「そんなこときくもんか。 おれは『星の宝冠』をしまったところを忘れやしねえ。 」 「あっ、それじゃあ、あいつだ。 あれが明智のやろうだったんだ。 」 「おいっ、なにをいっているんだ。 明智にそんなこと聞かれたのかっ。 」 「へえ、あれが、まさか明智だとは知らねえもんだから、かしらは、へんなことを聞きなさると思ってね。 」 「き、きさまっ、それじゃあ、もしや……。 」 「かしら、すみません。 『星の宝冠』は、あいつが持っていったんです。 」 「おれにばけた明智のやろうがか?」 「へえ。 」 ピシャン……首領の 平手 ( ひらて )が、その部下のほおにとびました。 まぬけな部下はほおをおさえて、うしろへひきさがります。 「さあ、みんな、明智をさがせ。 どっかにかくれているはずだ。 せっかくぬすんだ『星の宝冠』を取りかえされたんじゃあ、おれの顔がたたねえ。 どんなことがあっても、明智のやろうを、つかまえなけりゃあ……。 」 それから、また、船の中の 大捜索 ( だいそうさく )がはじまりました。 しばらくすると、さっきボートにのった三人の部下は、なにかコソコソささやきながら、後部甲板のはずれのほうへやって来ました。 「おい、のぞいてみろよ。 ひょっとしたら、あのボートで。 」 「うん、おれも、そんなことじゃないかとおもうんだ。 」 三人はてすりにもたれて、まっくらな海をのぞきました。 「あっ、ないよ。 ボートがなくなっている。 」 なわをひくと、ズルズルとあがってきます。 そのさきにくくりつけてあったボートはかげも形もないのです。 三人は首領にこれを知らせるために、船室へ走りこみました。 「なにっ、ボートがなくなったって。 」 首領もかけだしてきました。 おおぜいの部下が、そのあとにつづきます。 そして、みんなが後部甲板のてすりにもたれて、くらい海を見おろすのでした。 もし、ひるまなら、まだ明智ののったボートが見えていたのかもしれませんが、このくらさでは、どうすることもできません。 首領は船を東京のほうへすすませて、ボートをさがしましたが、ついに明智探偵を発見することはできませんでした。 東京に近づきすぎては、こっちの身の上があぶないので、思うぞんぶんに、さがしまわることができなかったからです。 それから一週間ほどたったある日のことです。 明智探偵事務所へ、みょうな電話がかかってきました。 明智が電話口に出ますと、いきなり、ウフフフフ……という、きみのわるい笑い声が聞こえてきました。 「ウフフフフ……、明智先生かね。 おれは恐怖王といわれているどろぼうだ。 このあいだは明智先生のうでまえを、つくづく見せてもらったね。 あれはおれのまけだった。 たしかにまけたよ。 だが、おれは、まけっきりではすまさない。 このしかえしは、きっとしてみせる。 先生、ようじんするがいいぜ。 おれはまだ恐怖王のほんとうのおそろしさを見せていないのだ。 ゆだんをしたら、とんでもないことになるぜ。 だが、『星の宝冠』はもうあきらめた。 やりそこなったら、すっぱりあきらめて、ほかの、もっと大きなえものをねらうのが、おれのやりかただ。 そこで、こんどは、おれがなにをねらうとおもうね。 ウフフフフ……、いくら名探偵の明智先生でも、こればっかりはあてられまい。 世間をあっといわせてみせるよ。 いや、世間よりも明智先生をあっといわせたいね。 こんどは道化仮面のようなやさしいものじゃないぜ。 おそろしい仮面だ。 東京じゅうが、ふるえあがるような恐怖の仮面だ。 」 それをきくと、明智探偵は笑いだしました。 「ハハハハ、電話で挑戦というわけだね。 よろしい。 いつでも挑戦におうずるよ。 このあいだの汽船では、きみの部下がおおぜいいたので、『星の宝冠』を取りもどすだけでがまんしたが、こんどこそ、きみをとらえてみせるぞ。 きみこそ、ようじんするがいい。 」 「ウフフフフ……、おもしろくなってきたね。 明智大探偵対仮面の恐怖王か。 巨人対怪人というやつだね。 それじゃ、そのときまで、明智先生、からだをだいじにしたまえ。 じゃあ、あばよ。 」 そして、プツンと電話がきれました。 それから一月ほどは、なにごともなく過ぎさりました。 そして、ある日のことです。 京都市の三十三 間堂 ( げんどう )に、ふしぎな事件がおこりました。 三十三間堂の細長いお堂の中には、おまいりの人の通路を残してお堂いっぱいに、ピカピカひかる金色の、人間とおなじぐらいの大きさの仏像が何百というほど、びっしりならんでいます。 その夕方、小学校六年生のふたりの少年、 高橋 ( たかはし )君と 丸山 ( まるやま )君とが、お堂の中の通路を歩いていました。 もう、うすぐらくなっているので、おまいりの人もみんな帰ってしまい、ガランとしたお堂の中には、ふたりの少年のほかには人の姿もないのでした。 しかし、人間はいなくても、人間とおなじ大きさの金色の仏像が、いくえにも、かさなりあって、かぞえきれないほど立ちならんでいるのです。 その何百という金色の仏像が、だまりこんで、身動きもしないで、夕やみの中にむらがっているようすは、なんともいえないぶきみさです。 「もう、帰ろうよ。 だれもいなくなってしまったじゃないか。 」 丸山君が、心ぼそそうにいいました。 すると高橋君は、ふっと立ちどまって、びっくりしたような顔で、むらがる仏像のまんなかへんを見つめました。 「高橋君、どうしたの? なにをそんなに見つめているんだい?」 丸山君が聞きますと、高橋君は、シーッというように口の前に指を立てて、目で、そのほうを、さししめしました。 丸山君は高橋君の目を追って、仏像のむれの中を見ました。 おやっ! これはどうしたのでしょう。 ウジャウジャ集まっている仏像のまんなかに、一つだけ、まったくちがったすがたの仏像が立っているではありませんか。 それは、ほかの仏像よりもからだが大きいので、よく見れば、すぐわかるのですが、頭にはインド人のターバンのような金色の 布 ( ぬの )をまきつけ、金色のダブダブのマントのようなものを着ています。 顔はむろん金色ですが、ほかの仏像より大きな顔で、お 能 ( のう )の面のように、うすきみがわるいのです。 気のせいか、そのへんな仏像は、黄金の顔で、じっとこちらを見かえしているようです。 二少年はその仏像と、長い間にらめっこをしていました。 すると、ゾーッとするようなことがおこったのです。 へんな仏像のからだがユラユラと動きました。 そして、黄金の顔のくちびるがキューッと三日月形にめくれあがって、ほそい黒いすきまができました。 笑ったのです。 黄金の顔が、ニヤニヤと笑ったのです。 二少年は、あまりのおそろしさに、からだがすくんだようになってしまいましたが、高橋君は勇気をだして、丸山君の手をひっぱって、へんな仏像の見えないところまで、つれていきました。 そして耳に口をあてるようにして、ささやくのでした。 「あいつ、見たかい。 仏像じゃないよ。 生きているんだよ。 身動きしたじゃないか。 そして、ぼくらのほうを見て笑ったじゃないか。 」 「うん、そうだよ。 あやしいやつだねえ。 おばけかしら?」 「おばけなんて、この世にいるはずないよ。 あいつ、悪者にちがいないよ。 金色の姿をして仏像の中にかくれて、なにか、わるだくみをしているんだよ。 ぼくたち、ここから、のぞいていよう。 あいつ、もっと動くかもしれないからね。 」 二少年は、ものかげに身をかくして、そっと、のぞいて見ることにしました。 少年たちの考えは、あたりました。 そのへんな仏像みたいなやつは、動きだしたのです。 その怪人はむらがる仏像をかきわけて、おまいりの人の通路へ出て来ました。 それで全身があらわれたのですが、金色のマントの下には、ぴったり身についた金色のシャツと、金色のズボンをはき、くつまで金色でした。 怪人は、通路のまんなかを、ゆうゆうと歩いていきます。 二少年は遠くはなれて、そのあとをつけました。 「おい、あいつ、黄金仮面だよ。 」 高橋君は、尾行をつづけながら、丸山君にささやきました。 「ぼく、いつか、『黄金仮面』という本を読んだことがある。 その本についていた写真が、あいつと、そっくりだったよ。 その黄金仮面は、フランスの大どろぼうのアルセーヌ=ルパンがばけていたんだが、ルパンはもう死んじゃったから、あいつはルパンじゃないよ。 きっと、むかしのルパンのまねをして、黄金仮面にばけているんだよ。 」 ああ、黄金仮面。 そのむかし、日本じゅうをふるえあがらせた、あの怪人黄金仮面が、もう一度あらわれたのです。 そして、いま、目前をむこうへ歩いていくのです。 二少年は、なんだか、おそろしいゆめを見ているような気がしました。 お堂の入口には、番人がいるのですが、黄金仮面は平気な顔で、その前をとおりすぎました。 番人は、ギョッとして、立ちすくみ、あまりのことに口をきく力もありません。 怪人はお堂を出ると、一度も、ふりむかないで、ゆっくり歩いていましたが、二少年が、ついゆだんをしてそのうしろへ近づいたとき、ヒョイとこちらをふりかえりました。 そして笑ったのです。 あのきみのわるい三日月形の口で、ニヤニヤと笑ったのです。 二少年は、そこに立ちすくんだまま、身動きもできません。 まっさおになって、あいての金色の顔を見つめているばかりです。 すると、みょうな、しわがれ声が聞こえてきました。 黄金仮面が、ものをいったのです。 「ウフフフフ……、おい、きみたち、おれをつけてくるとは、なかなか、勇気があるねえ。 だが、だめだよ。 おれは人間じゃないんだからね。 鳥のようにじゆうじざいに、空がとべるんだからね。 きみたちにはどうすることもできないよ。 ウフフフフ……。 」 そういったかとおもうと、怪人は、クルッと、むこうをむいて、サーッとかけだしました。 金色のマントを、うしろになびかせて、まるで魔物のような早さで走るのです。 そして、あっとおもうまに、うすぐらい夕やみの中へ、姿を消してしまいました。 あいてが見えなくなると、二少年は、やっと正気をとりもどして、そのあとを追いました。 すこしいくと、高さ三十メートルもあるような、大きなシイの木が立っていました。 見あげると、風もないのに、シイのこずえがユラユラと、ゆらいでいます。 「へんだねえ。 あいつ、この木の上へ、のぼっていったんじゃないだろうか。 」 高橋君がいいました。 すると、そのとき、お堂のほうから、白いきものに、腰ごろもをつけた番人の若いぼうさんが、いきせききってかけつけてきました。 「おい、きみたち、いまの金色のばけものは、どこへいった。 おまわりさんをよんで、とっつかまえなけりゃあ……。 」 高橋君はシイの木のてっぺんをゆびさして、答えました。 「あれ、あんなに木がゆれているでしょう。 あいつが、あそこへのぼったのかもしれない。 」 ぼうさんは手をかざして、シイのこずえを見あげましたが、夕やみにつつまれているので、はっきりはわかりません。 そのときです。 木のてっぺんが、ひときわはげしくざわめいたかと思うと、そこから空中に、サーッと金色のものが、とびだしたではありませんか。 ああ、あいつです。 黄金仮面が、空をとんでいくのです。 怪人は、高い空中を、からだをよこにして、両手をまっすぐに前にのばし、まるで水の中を泳ぐような形で、とんでいます。 金色のマントが、ヒラヒラとはためいて、映画のスーパーマンと、そっくりです。 金色のスーパーマンが夕やみの空を高く、高く、とんでいくのです。 二少年とぼうさんとは大きな口をあいて、あっけにとられて、それを見あげていましたが、黄金仮面はみるみる、遠ざかっていき、だんだん、そのすがたが小さくなり、ついには、一つの金色の星のようになって、そのままスーッと、夕やみの空に消えていってしまいました。 あくる日の新聞が、その怪事件を大きく書きたてたことは、いうまでもありません。 高橋、丸山の二少年は、学校でみんなにとりかこまれ、黄金仮面の話を、なんどとなく、せがまれるのでした。 それから一週間ほどのち、舞台は東京にうつって、またしても、おそろしい事件がおこりました。 ある夜、少年探偵団員の 木下 ( きのした )君と 宮島 ( みやじま )君が、 世田谷 ( せたがや )区のクイーンという小さな映画館の客席に、腰かけていました。 このふたりは小学校六年生で、まだ少年探偵団にはいったばかりでしたが、正式の団員ですから、むねには、とくいそうにB・Dバッジをつけていました。 なぜそんな小さな映画館にはいったかといいますと、そこには「むかしなつかしき、おもいでの映画週間」というかんばんが出ていて、こんやは十年も前に大ひょうばんだった「黄金仮面」の古い映画が上映されていたからです。 あの京都の高橋少年が読んだという、ルパンのばけた「黄金仮面」の本が映画になったものです。 ふたりの少年は、その本を読んでいましたけれど、映画は一度も見ていなかったので、クイーン映画館のかんばんを見ると、さっそく見物することにしたのです。 まず上野公園の博覧会にちんれつしてあった、何千という真珠の玉を集めてこしらえた、三十センチほどの小さい塔を黄金仮面がぬすみだすところから始まって、だんだん場面がすすんでいきましたが、ある場面で、黄金仮面の顔だけがスクリーンいっぱいに大うつしになりました。 ふつうの人間の何千倍もあるような、とほうもなく大きな顔です。 しかもそれが金の顔で、お能の面のように、うすきみわるい形をしているのです。 その顔が口を三日月形にキューッとまげて、ニヤニヤと笑いました。 口のところが三日月形の、ほそい穴になって、そのおくに歯や舌があるのでしょうが、なにも見えず、まっ黒なのです。 そこでは音楽もやんでしまって、なんの音も聞こえません。 見物席はかたずをのんで、シーンと、しずまりかえっています。 そのしずけさをやぶって見物席のすみから、キャーッという、ひめいがおこりました。 女の人があまりのおそろしさに、おもわず、さけび声をたてたのです。 見物人たちは、その声にゾーッとふるえあがりましたが、てれかくしのように、ほうぼうに笑い声とざわめきがおこりました。 見物人というものは、こわいときに笑うものです。 つぎのしゅんかん、その笑い声がピタリと、とまってしまいました。 画面におそろしいことがおこったからです。 黄金仮面がスクリーンいっぱいに笑っている、その三日月形の口の右のすみから、まっかな液体がタラタラとながれおちたのです。 その映画はカラー映画でなくて、白黒の映画なのです。 その色のない画面に、とつぜん、まっかな色の液体がながれたのです。 血です。 うすきみのわるい三日月形の口から、血がながれおちたのです。 そして、その血だけが、まっかな色をしていたのです。 黄金仮面はまだ笑っています。 声のない笑いを、笑っています。 そして、その口から血をはいているのです。 カラー映画でなくても、フィルムの一枚一枚を虫めがねで見ながら、小さく色をぬれば、こんなふうに見えるかもしれません。 しかし、色が出したければカラー映画をとればいいのですから、いまどき、そんな てまのかかることをするはずがありません。 じじつ、その映画には色はまったくついていなかったのです。 それが、こんやにかぎって、まっかな血がながれだしたのです。 見物人はギョッとして逃げごしになって、席から立ちあがりました。 それより、もっとおどろいたのは映写技師です。 血を見るとびっくりして、機械をとめてしまったのです。 そしてフィルムをはずして、よくしらべるために、そのあいだ場内の電灯をつけました。 スクリーンの大うつしがぱっと消えて、見物席があかるくなりました。 見物人のひとりひとりが、じぶんは気がちがったのではないかと思いました。 あんなおそろしい映画があるはずはないからです。 ですから、スクリーンの画面が消えて、場内があかるくなったときには、ゆめからさめたような気持でした。 少年探偵団員の木下君と宮島君も見物席の前のほうで、この怪映画を見たのですが、これはなにか犯罪にかんけいがあるかもしれないと思ったので、こわさもわすれて、キョロキョロと場内を見まわすのでした。 そのときです。 見物席にワーッというような、どよめきがおこりました。 そして、てんでに席を立って、映画館の入口のほうへ逃げだそうとしました。 それもむりはありません。 スクリーンの前の舞台のうえに、おそろしいことがおこっていたのです。 ああ、ごらんなさい。 スクリーンの前に、なんともえたいの知れぬ怪物が、のこのこと、あらわれてきたではありませんか。 それは映画の中の黄金仮面とそっくりのやつでした。 スクリーンからぬけだして実物になって、あらわれたとしかおもわれませんでした。 金色の顔、頭には金色のターバン、金色のマント、金色のズボン、金色のくつ。 そいつがスクリーンの前にたちはだかって、見物席を見おろしているのです。 映画館の人は客席のうしろから、それを見ると、あおくなって、一一〇番へ電話をかけました。 すると、三分とたたないうちに近くをまわっていたパトロールカーがかけつけ、ふたりのおまわりさんが、映画館の中へとびこんできました。 それからのさわぎは、どう書いたらいいのか、わからないほどでした。 ふたりの警官は廊下をとおって、舞台にかけあがりました。 それといきちがいに、黄金仮面はヒラリと客席にとびおり、いすのあいだを入口のほうへ走るのです。 まだ残っていた見物人たちは、黄金仮面につかまったらたいへんだと、身をよけて通り道をあけてやります。 そのためにうしろにいた人たちがころんでしまい、こどものなき声、女の人たちのひめいで、なんともいえないさわぎです。 木下、宮島の二少年もその中にいましたが、いくら少年探偵団でも、この怪物にであっては、どうすることもできません。 ただ、さわぎをながめているばかりです。 黄金仮面は客席をつっきると、おもてへは出ないで、二階の見物席への階段をかけのぼり、二階のおもてがわの窓をやぶって、ひさし屋根に出ました。 おもての道路は、逃げだした見物人たちと通りがかりの人たちで、いっぱいになり、自動車が何台も動けなくなっているのです。 黄金仮面はその群衆を見おろして、あの三日月形の口でニヤニヤと笑いました。 そして、ひさし屋根の一方のすみまでいくと、そこにさがって来ている大屋根のはしに手をかけ、ヒラリととびのって、いまにもすべりおちそうな大屋根の上を金色のトカゲのように、はいあがっていくのです。 ふたりのおまわりさんは窓のそとに出て、ひさし屋根まで来ましたが、とても大屋根へはのぼれません。 黄金仮面はかるわざ師のように身がかるいので、ふつうの人間に、そのまねができるはずはないのです。 それから、しばらくすると、映画館の前に集まって、屋根を見あげていた群衆の中から、ワーッという声がわきあがりました。 みんな、夜の空を見あげて、さけんでいるのです。 大屋根よりも、もっと高い空を見ているのです。 いったい、なにがおこったのでしょう。 おお、またしても、空中飛行です。 黄金仮面は金色のマントをひるがえして、夜の大空を、南をさして一直線にとんでいくのです。 スーパーマンのように、とんでいくのです。 空には、かずしれぬ星が、またたいていました。 その下を、星よりもうつくしくひかる黄金の 鳥人 ( ちょうじん )が、おそろしい早さでとんでいくのです。 そして、あれよあれよと見るまに、黄金仮面の姿は、たちまち小さくなり、またたく星の間にまぎれこんで見えなくなってしまいました。 恐怖王は黄金仮面の怪物にばけて、映画館の屋上から星のきらめく大空へ、とびさってしまいました。 そのまえに映画館のスクリーンに血をはく黄金仮面の顔が大写しになりました。 白黒の映画に、仮面の三日月形の口からながれる血の色だけが、まっかにうつったのです。 あとでしらべてみますと、恐怖王は映画のフィルムをぬすみだして、その一こま一こまを虫めがねで見ながら、赤いえのぐをぬって、また、もとの映写室へもどしておいたことがわかりました。 赤いえのぐを一こまずつ、だんだんのばして、ぬっておいたので、それを映写すると、タラタラと血がながれるように見えたのです。 それはわかりましたが、黄金仮面の恐怖王が、どうして鳥のように空をとぶのか、その秘密は、だれにもわかりません。 あいつは魔法つかいなのでしょうか。 さて、映画館の事件があってから一週間ほどたって、 目黒 ( めぐろ )区の 片桐 ( かたぎり )さんのおうちに、おそろしいことがおこりました。 片桐さんのおうちは、さびしいやしき町にある、ひろい西洋館でしたが、そこには一郎君とミヨ子ちゃんという、ふたりの子どもがいました。 兄の一郎君は小学校六年生、妹のミヨ子ちゃんは小学校三年生でした。 あるばんのこと、ふたりが勉強部屋で、つくえをならべて本を読んでいますと、カーテンのひらいたガラス窓の外でチカッとひかったものがあります。 本を読んでいても目のすみで、それが見えたのです。 「あらっ、なんでしょう。 」 「うん、へんだね。 なんだか、ピカッとひかったね。 」 しかし窓の外にはもうなにも見えませんので、ふたりは、また本を読みはじめました。 しばらくすると、またしても、チカッとひかりました。 一郎君はいすから立って窓のそばへいって、外をのぞいてみました。 そこには、まっくらな、ひろい庭が、ひろがっているばかりで、なにもありません。

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【ポケモンGO】トレーナーレベル(TL)の上げ方!効率の良い経験値稼ぎ

地面にたたきおとしてやるぜ

GOロケット団が7月23日早朝から実装開始 2019年7月23日早朝5時からGOロケット団、シャドウポケモンが正式実装されました!ロケット団は世界各地のポケストップを侵略中。 黒いポケストップがあらゆる場所にランダムで出現しています。 リトレーンの仕様 シャドウポケモンはリトレーンすることで、元の優しい姿に戻すことができるようです。 リトレーンの仕様について説明します。 リトレーンに必要なコスト シャドウポケモンの強化ボタンの上にリトレーンという項目があります。 リトレーンは一定数のほしのすなとアメが必要となります。 シャドウポケモン ほしのすな アメ カビゴン 5,000 5 ミニリュウ系 ストライク系 コラッタ系 1,000 1 ズバット系 コイキング系 御三家 3,000 5 ニョロモ系 ベトベター系 スリープ系 カラカラ系 デルビル系 GOロケット団したっぱバトル勝利数、リトレーンしたポケモンの数に応じて貰えるメダルが新たに登場。 プレミアボール獲得数に影響するため、早めにゴールドにしたいところ。 恐らくキラシャドウポケモンをリトリートし、個体値100狙いが簡単にできるのことの制限だと思われます。 恐らくコミュニティデイと混合しないように8月3日以降の登場が予想されます。 シャドウポケモン一覧 ニョロモ ニョロゾ ニョロボン ニョロトノ ベトベター ベトベトン スリープ スリーパー カラカラ ガラガラ ストライク ハッサム コイキング ギャラドス デルビル ヘルガー ラルトス キルリア サーナイト エルレイド 7月26日に追加されたシャドウポケモン 実装初日に実装が確認されたシャドウポケモンがこちら。 新たに判明したシャドウポケモン20種類 ディグダ ダグトリオ サイホーン サイドン ドサイドン ガルーラ クラブ キングラー シェルダー パルシェン イシツブテ ゴローン ゴローニャ ヤミカラス ドンカラス ヒポポタス カバルドン フカマル ガバイト ガブリアス 【7月18日追加】シャドウポケモン解析データ一覧 ゲージ内データに存在しているシャドウポケモン一覧を紹介。 実際にゲットできるシャドウポケモンについては調査中です。 アローラのすがた アローラのすがたシャドウポケモン一覧 コラッタ ラッタ ベトベター ベトベトン ガラガラ 【7月17日追加】シャドウポケモン解析データ一覧 新たにシャドウポケモンのデータが117種類追加されています。 カントー地方 カントー地方のシャドウポケモン一覧 フシギダネ フシギソウ フシギバナ ヒトカゲ リザード リザードン ゼニガメ カメール カメックス コラッタ ラッタ ズバット ゴルバット カビゴン ミニリュウ ハクリュー カイリュー ジョウト地方 ジョウト地方のシャドウポケモン一覧 クロバット ホウエン地方 ホウエン地方のシャドウポケモン一覧 ミズゴロウ ヌマクロー ラグラージ 【ポケモンGO】最新レイドバトル情報 7月11日早朝から7月31日まで伝説レイドにアーマードミュウツーが登場!対策ポケモンや最適技構成をこちらの記事で詳しくご紹介中です! レイド対策 CP個体値判別 ゲットチャレンジ攻略.

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